よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「残酷な神が支配する」萩尾望都

他の日付で容量オーバーになったようで中身が削られたので、新たに登録。


読書日記。

ふぅ。
とても苦労しました。
凄い、というべきか、苦行だった、というべきか。

(2009年08月07日読了)



学校の寮に入ることになったジェルミは罠から逃れられるとホッとしたが。

(2009年04月12日読了)


一家の過去が少し明らかになる。
崩壊と慣れの同居していくジェルミ。
何も知らぬイアンはある提案をジェルミに持ちかける。

(2009年04月26日読了)


(2009年04月26日読了)


学内のスキャンダルで寮を移ることになったジェルミ。
少しずつ壊れていくジェルミ。

(2009年05月04日読了)


ついにグレッグへの殺意が表面化してくるジェルミ。

(2009年05月07日読了)


事故の調査を始めるイアン。
追い詰められていくジェルミ。

(2009年05月17日読了)


すべてが明るみに。
ジェルミが細工した車は欠陥車だったと判明。
事故だったのか、殺人だったのか。
イアンを苦しみが襲う。

(2009年06月01日読了)


父親の真の姿を探るイアンにやがて降りてくる深い悲しみ。

一方、ボストンに戻ったジェルミは荒んだ生活をしていた。
イアンはジェルミに会いにいく。

ジェルミが「いろんなものが」洩れてこないように、見えない蛇口を閉めようとして「きゅっ」「きゅっ」とつぶやくシーンが印象的。

(2009年06月01日読了)


イアンのセリフ「神様は返さない」

イギリスに戻るジェルミ。
新しい暮らしが始まる。

(2009年06月07日読了)


ぼくは きみのやさしさに見合う人間じゃない!(イアン)

しだいに混乱していくイアン。

(2009年06月21日読了)


なぜかイアン、ジェルミ、ナディア、マージョリーの4人で自転車旅行。

彼は神が創った実験作だよ(イアン)

(2009年06月27日読了)


読書日記。

イアンはジェルミと対話をはじめる。しかしそれは抜けられない森に通じる道だった。「誰か 助けてくれ」とつぶやくイアン。

(2009年07月15日読了)


対話は続く。ジェルミが壊れていくのではないかと不安になるイアン。
おまえが何度バラバラになっても(byイアン)
エリックたちとともにバレンタインに会いにいくことになったジェルミ。
イギリスには幼い頃虐待を受けた人しかいないの?

(2009年07月19日読了)


解体される過去から逃れ出られたように思えたが…

あいつはオレのほしい言葉をくれない(byイアン)

(2009年07月25日読了)


いろんなこと見ないほうがいいんだ(byジェルミ)
ぼく 悪魔なんだ(byジェルミ)

(2009年08月02日読了)


最終巻。
なんか、苦労したなぁ。

そしてジェルミは少しずつ生の側に歩んでいくのだろう。
断崖を常に意識しながらも。

幻想は人間の本質にねざしてるのよ 迷子になる人は迷子になる理由があるのよ(byマージョリー

子供は親の 神への供物であり 親の人生の供養として存在するんだ(byイアン)

(2009年08月07日読了)


残酷な神についての簡単なリストを下に置きます。

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「勾玉三部作」萩原規子

闇(くら)の巫女として生まれ光に惹かれる少女、狭也(さや)と、光の末弟、雅羽矢。

うーん、似たようなタイプでは「十二国記」なんかに較べるとちょい落ちるかな。

(1997年01月01日読了)


光と闇の宿命を負いつつ双子のように育った遠子(とおこ)と小倶那(おぐな)の別れと再会。

(1997年01月01日読了)


闇の少年、阿高(あたか)とその仲間たち。
光の末裔の少女と、都に巣くう光の怨念。

(1998年01月03日読了)

人生を変えた本?

うーん、人生を変えた本だって?
そりゃあ、よくはわからないけど。

たとえば太宰治の「人間失格」とか?
ずっと理系ないしは工学系に進むつもりだったのが「へぇ、小説ってこんなことまで書けるんだ。文学系もおもしろいかもね」と、結局そっちに進むことになったとは言えるんだから。

たとえば「アーサー・ランサム全集」とか?
ツバメ号シリーズね。
もう少し早く、高校生か中学生か、そんな頃に読んでたらたぶん変わってたとは思う。
もそっと起伏の激しい人生になってたかもしれないね。
冒険者になってたかもね。
たぶん、生き方は大幅に違ってたんだろうなあ。
と、想像してるだけだけど。

少なくとも、あなたには出会えなかったろう。

でも、それらも性格を変えるとか、人生観を変えるとか、そういうんじゃないなあ、たぶん。
性格を変えた本なんてないと思うよ。
まあ、人生変わってたら性格もそれにひきずられて変わってたとは思うのだけど。

考え方を変えた本は少しはあるかもしれない。
たぶんいくつかあると思うけど、ひとつ意識できているのは中学生か高校生のとき読んだ、
松浪信三郎「実存主義」(岩波新書)。
これも内容そのものもよりも、そのただの一節。
信仰のある者は自分のモノサシで測っているのではなく神というモノサシで測っているというようなことが書かれていたくだりだけ。
その辺ですこし考え方がシフトされたのは意識したんだ。

あと、大学の一回生の頃、ものごとへの許容範囲がずいぶん広くなったのは意識できてるんで、その辺で何らかの本との出会いはあったかもしれないとは思ってる。
なぜ人との出会いではなく本だと思うのかというと、そういう変化をボクにもたらしそうな人物とは出会っていないから。
これまでの人生で。
それもわからないけどね。
ただ、本との出会いというよりも、ボク自身の自然な変容にすぎなかったかもしんない。
アプリオリに持ってたものが出たのかもねえ。
その可能性の方が強いかなあ。

結局のところ、そんなこんなも小さな選択肢のひとつにすぎないんだろうと思うよ。
右の道を行っても、左の道を行っても同じ目的地には着ける。
じゃあ、その日そのときどっちを選ぶか。
結果は変わらないけど、何か異なっているかもしれない。
異なった体験をしたのだから。
30秒遅く着くことになったのだから。
それによって事故に遭わずにすんだとかそういうのは別にして。

今、クラシックを聴くかブルースを聴くか。
今、ベランダに出てタバコをすうか、すわないか。
今、上を向くか、下を向くか。
今、これを書いているか、めんどくさくなって書かずにやめてしまうか。
それら間断なく選び続けている行為や思考ひとつひとつによって、ほんの少しずつのズレってのが発生し、結果的に遠い未来の自分の姿はいくらか違ってくるのだろうと思ってる。
そしてAではあなたに出会い、A'ではあなたに出会わない、くらいの差があるかもしれない。
それによって、さらに誤差は大きくなる。

逆に大きな違いのある体験をしても、結果的にボクという存在が吸収してしまい、なんのズレも発生しない場合もあるかもしれない。
その辺はわからない。

ぷつっ、と枝から落ちた木の葉の軌跡はスーパーコンピューターでも計算できないという。
あまりにも数多くのズレの、不明の、要素がありすぎるから。
大まかなところはわかるにしても。
たぶん人間の航跡も同じなんだろう。
大まかには想像できるにしても軌跡と着地点は少しズレる。
結果を見るしかないってこと。
大まかなところを大きくずらすためには強い風がいきなり吹いてくるとかしかないんだろう。
本ってのはよっぽどうまくタイミングなどが合わないかぎりそんな体験にはなりえないかもしれない。
もちろんなる場合もあるんだろうとは思うけど。

なんにせよ、やっぱり、「変えた」「何か」なんてのは今の自分にも過去の自分にも未来の自分にもわからないのが普通だろうと思うんだけど、どうかな?
だから本当にはわからないってこと。
答えにゃなってないね?
そんな小難しいつもりの質問じゃなかったって?
まあ、せやね。

「産霊山秘録」半村良

忍者の大元締めといえる「ヒ」の一族は衰退していた。
それでも戦国を終わらせ平和をもたらすために織田信長を後押しするが・・・

(2011年05月06日読了)


【評価】ふつう

【キャッチコピー】ヒ。たのもしく哀しき存在。

【一行書評】下巻は幕末から現代(ちょっと以前)まで。

【内容】下巻に入ってからだんだんと面白くなってきた。
上巻はいうなれば
 ・戦国時代・飛稚編。
 ・戦国時代終焉編。
 ・戦国後・猿飛佐助編。
下巻はいうなれば
 ・江戸末期(天保)・鼠小僧次郎吉編。
 ・幕末・坂本龍馬編。
 ・第二次大戦後・ふたたび飛稚編。強いて言えばこれが本編ということになるか。

【この作品10の要素】
 ・ヒという存在。
 ・歴史のカゲにヒあり。
 ・忍の中でも別格の能力。
 ・超能力。
 ・歴史的人物の誰がヒなのか。
 ・ころころ代わる主人公。
 ・ヒの男と女−オシラサマ。
 ・産霊山ネットワーク。
 ・芯の山。
 ・SFなのか伝奇ものなのか。

【得したこと】ヒを通して歴史を楽しむ方法を知る。

【損したこと】物語としてはめちゃくちゃおもしろいというわけでもなかった。


【読了日】2010年05月21日


産霊山についての簡単なリストを下に置きます。

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「深夜の散歩」福永武彦+中村眞一郎+丸谷才一

はるか昔に読んだのは単行本。

内容なんて忘れているので再読してみた。
古本屋で見つけた文庫本を読み用に買ったことだし。
もういっかいいろんなミステリを読みたくなった。

福永武彦さんはちょいちょいネタバレやっちゃうのでけっこうな危険人物だ。
でも読みたいミステリはいくつか見つけられた。
実際のところ自分で読んだミステリだってほとんど内容は忘れてしまうものだから書評する人が多少ネタバレやったって数年後には問題なくなるのだ。

中村眞一郎さんのは昔読んだときはあんまりおもしろいと思えなかったけど今読むとかなりおもしろい。ミステリの書評というより軽いミステリ論・文学論になっている。
そこが当時のボクには合わなかったのだろう。というか期待通りの内容ではなかったのだろう。おそらくミステリを読むためのカタログとして読んでいたのだろうから。
今おもしろいと思えるようになったのはこちらにいくらかのゆとりができたからかもしれない。あるいはブックガイドとしてではなく単なるエッセイとして読んだからなのかもしれない。

丸谷才一さんのは当時もおもしろいと思ったし今度読んでみてもおもしろい。取り上げられているミステリを読みたくなるような書き方をしてくれている。
書評の書き手としていちばん上手なのはこの人だろうと思う。

(2011年06月14日読了=再読)

「坂田靖子セレクション」

いつもの坂田調デス。
あっさり、ほんわり。

その内訳は・・・
 ・とぼけた男の前にとぼけた魚と仙人と化け物が山登り。
 ・定刻にこだわる「定刻ホテル」。
 ・少年と月光。
 ・少年とおばあちゃんちのこびと。
 ・少年と謎のパレード。
 ・少女と魔王の宮殿と柱に貼りついたおじいちゃん。
 ・正月を前に大忙しの番頭さんと不思議な二人のこども。

(2011年04月17日読了)


この巻は読んだことがあるような童話のパロディ。

どこかすっとぼけてぼんやりしている坂田靖子調のキャラクタ。
あまり残酷にはならない。

とはいえ、

たんたんとクールに展開するのも、
また坂田靖子調。

(2011年04月23日読了)


坂田靖子さんのちょっとふしぎなあと味の短編集。
「アジア変幻記」の2。
 ・「新月宵」神と悪魔の同居している世界。
 ・「石の谷の姫君」異界譚。聊斎志異みたいだが、すっと去る。
 ・「水の色の空」小悪党ぽい少年はふと出会う。
 ・「象牙飾りの窓」象を多く殺さねば作れない窓に躊躇する職人。
 ・「桃の村」箱庭の中にいるのか外にいるのか。
 ・「塔にふる雪」僧院にあらわれた赤ん坊になつかれた僧。

解説がすばらしい。
なるほどなるほど、的確だ。

「人間の脳のある部分は、神を探すために空けられているのではないかと思った。」
そしてときおり坂田靖子さんの世界で神を見出す。

坂田靖子の世界の物語はこれにて一件落着というよりは、まだ先に話は続くんだけど今日はこれでお終いとでもいった風に終わる。余韻とも違う。物語の対象からすうーっと遠ざかっていく感じだ。・・・人間の目の中にあった神の視線がす、す、すーと天にもどっていくカンジ・・・もどってそれは天空の月になる。吹きあげる雪になる。人と天の視座をこの作者は往き来するのだ。読むこちらもその往来の自在さにふわりと浮いて快感である。」

「このやわらかい絵の線が読み手を守ってくれるのだ。ひょろりとふわりとあいまいに愛を感じる坂田靖子の世界。」

解説を誰が書いてるかはあまり気にしたことがないのだだけど思わず「誰やろう?」と署名を見たら萩尾望都さん。
さすが。

(2011年05月01日読了)


【キャッチコピー】ふしぎなことごとうけいれて

【一行書評】坂田ふう堤中納言物語でゆたかな気分。

【評価】よかった

【読了日】2011年05月13日

【この作品10の要素】
 ・おかしなことがある世界ってのはたのしい。
 ・ただそれだけのこと。
 ・怖い状況でもお気楽な連中。
 ・願いのかなう小槌で願いをかなえてもらいたい男は・・・
 ・味噌好き医師とその弟子のタフさ。
 ・河童のエピソードいくつか。
 ・虫めずる人々の小さなエピソード。
 ・狐が母だというウワサに悩む安倍晴明さん。
 ・美しい笛を吹く「月の姫」のウワサ。
 ・風情とふふっ。

【得したこと】ほわぁとのんびり気分になれる。

【損したこと】弛緩しすぎてほかのことがどうでもよくなるかも。

【名言】それだけの事である。