よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「おかしな本棚」クラフト・エヴィング商會 読書中・・・

欲しくなる「本棚」
■魅力的な断片を集めてくれるのがクラフト・エヴィング商會
■今回の断片は本の背中であり、それを集めた本棚。
■今回の「断片」は、いつもと異なり、おおむね架空ではないが、入手しにくさで架空に近いかもしれない。
■失われたものは架空と同義。
■失われかけているものには情味がある。
■いつもは、断片を集め、魅力的な架空を構築していく。断片は魅力的ではあるが基本的にはウソ。あるいは真の混じったウソ。そして構築するつながりも魅力的なウソ。断片はイメージであり、真偽は関係ない。ただ、作者は偽のほうにポエジイを感じやすいようだ。
■しかし架空は集積により存在感を醸し出す。
マインドマップのようでもある。
■断片はイメージであり、想いだ。
■詩だ。クラフト・エヴィング商會の作品は詩集とも言える。
■本棚ひとつひとつが詩だ。
■どの棚にも2〜3冊、多ければ半分くらい持っている本がある。それだけに他の本も欲しくなった。

「濹東綺譚」読書中・・・

すごく久しぶりの再読中。
たまに読みたくなる。
■文章の速度が3倍遅い。
■漢字の多さや、地の文の多さや、なにかあるごとにその描写や思いが綴られるからか。
■持っているのは昭和26年の創元文庫版。それもいい。
■情味。
■便利で安くつてそれで間違いがないなんて、そんなものは滅多にないよ。(p.9)
■ゆるい時代だがそれでも作者にとっては情感が失せてきているようだ。
■作者にとってキャラクタよりも状況が重要?

「八朔の雪」高田郁 読書中・・・

  • 江戸が舞台。
  • 女性料理人、澪が主人公。

あさひ太夫
吉原一の花魁と言われている。だれも見た者がいない。源斉は仮想アイドルではないかと考えている。でも、たぶん実在していて、あの人なんじゃなかろうか?
淡路屋
大阪の唐高麗物を扱う大店。澪の幼なじみ野江はここのこいさん
伊助
澪の父。塗り職人。独特の工夫をこらした箸は一兆庵御用達だった。被災後行方不明。おそらく死亡。
采女
登龍楼の主人。酷薄そうな男。帯刀を許されている。ジャマものは叩きつぶすタイプ。
扇屋
吉原の大店。吉原一の花魁あさひ太夫がいる。主人伝右衛門の妻は源斉の患者。
おりょう
近所のおかみさん。きさくな性格。48歳。伊佐三と、火事で身寄りのなくなった少年、太一とともに暮らしている。
嘉兵衛
天満一兆庵の主人だった。江戸に来てすぐに死亡。「客が家で食べられるようなものなら作るな」とかねがね言っていた。
切手
吉原が一般開放される日は、足抜け防止のため女だけ「切手」と呼ばれる手形を渡される。それを紛失したりしたら、さあたいへん!!
小松原
そこそここざっぱりした40歳の武士でつる家の常連。澪に対して親近感を抱いているようだ。卯年生まれで澪のひとまわり上。口に合わない澪の料理に対して「面白い」とつぶやく。
佐兵衛
天満一兆庵の若旦那。江戸店の主を任されたが行方不明。江戸店は潰れた。
太一
近所の子供。火事で両親をなくし、おりょう夫婦に引き取られた。
出汁がら
つる家で出る大量の鰹の出しがらはお百姓さんが持って行って肥料にする。リサイクル都市やなあ。
種市
蕎麦屋「つる家」の、初老の主人。なぜか澪に対してとてもよくしてくれる。意外にも、吉原フリーク(通ってるわけではない)。涙もろい、いい人。
つる家
澪が働く蕎麦屋神田明神下御台所町にある。
天満一兆庵
澪が上方で働いていた名の知れた料理店。火事で焼失。
登龍楼
江戸一の料亭。格式も、気位も、料理も、お値段もハンパではない。
とろとろ茶碗蒸し
澪が料理人としてブレイクスルーしたときに作った料理。
永田源斉
澪が化物稲荷を掃除しているときに知り合った5〜6歳上くらいの、神田旅籠町の青年医師。いろいろ世話を焼いてくれるいい人。薬膳的な考えを澪に教える。
野江
澪の上方時代の友人のようだ。まだ名前のみ。気が強い。「天下を取る」と有名な易者に言われたすごい相、旭日昇天の持ち主。被災後行方不明。たぶん生きてるんじゃなかろうか。たぶん、あの人やったりする?
化物稲荷
なぜか「たたりがある」とご近所から敬遠されていたお稲荷さん。ひとつ残っているお狐さまは、澪の旧友、野江とよく似て優しげだ。ここをきれいにしていたおかげで種市と知り合った。
ぴりから鰹田麩
澪が最初に考案したオリジナル料理。
ひんやり心太
上方ふうな心太に江戸ふうの味。
ほっこり酒粕
不幸から立ち直ろうとしたとき考案した料理。寒いからだもぬくくなる。
又次
あさひ太夫の使いをする男。
主人公。卯年生まれの18歳。蕎麦屋「つる家」で働いている。上方出身。名も、上方を象徴している名だ。ふだんはぼんやりしたおかめ顔のようで見事な「下がり眉」と言われている。だが料理に対すると少々シャープになるようだ。絶対味覚?を持っているようだ。天涯孤独の身だが、なぜそうなったかの詳細が明かされるのは第二話の「ひんやり心太」。艱難辛苦に負けなければ蒼空を見ることのできる雲外蒼天の相らしい。
天満一兆庵の女将だった。今は澪といっしょに長屋暮らし。澪は今でも「ご寮さん」と立てている。
わか
澪の母。料理に手抜きはしなかった。被災後行方不明。おそらく死亡。

十津川行

ずいぶん昔の話なのだけど。
ボクは長いことバス停にたたずんでいた。
ここからそのバスが出るということになっていた。
奈良の五條だった。
朝、家(大阪)を出て、これから十津川まで行くのだった。
まだ朝の早い時間帯だ。
時刻表に載っている時間が来てもバスは来ない。
次のバスの予定が来てもバスは来ない。
一日に何本もあるわけでもない。
来ないのはおかしい。
場所を間違えたのかもしれない。
通りがかった人に聞いてみた。
そのおじさんは苦笑いした。
「ああ・・・ここでええんやけどな。書いてる通りには来ん」
はあ?
「次のがいつ来るかはようわからん」
えーと。
「まあ、てきとうやな」
ガクッ。

のんきな時代でした?

時間がこんなにあったのなら、五條も風情のある町。
見物がてらぶらぶら歩いてみたかった。
でも、いつ来るかわからないんではバス停から離れられない。

そして、ボクはひたすらたたずんでいた。

ようやくバスが来たのは、すでにあきらめかけていた夕方近く。
何時間待っていただろう。
ボクの人生でもっとも苦しかった記憶のひとつだ。
しかもそこから長時間かかる路線なのだ。

もう暗くなるのに大丈夫?
車の転落事故が多い道だという。
以前質問したとき。
「ああ、もう大丈夫やで。以前はたしかによう落ちとったけどな。最近では年にいっぺんくらいしか落ちん」
うっ!!

ともあれ、えんえん揺られて。
ようやく十津川に着いた。
まっくらや。
なんも見えへん。
宿がどこにあるかもわからへん。

目が慣れてきたらおぼろげに道が。
ちょっくらあっちに歩いてみるか。
ふらふら行ってみた。
小さな土地のふくらみの先でふと空を見上げた。

星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星。
なんじゃこりゃー!!
星ばっかりやー。
こんなにたくさん星があるなんて。
はじめて知った。

しばらくぼーっとしてた。









あかんあかん、こっち行ってもようわからんわ。
なんもなさそうや。
もう一回バス停に戻った。
公衆電話があったので(ケータイなんて影も形もない時代)ユースホステルにかけてみた。
そしたらすぐそばの建物からベルの音。
あれ?
切ってみた。
聞こえなくなった。
あー、ここかしら?

すごく遅い到着だったけど。
ユースホステルの人には親切にしてもらった。
きょうはなんにもできなかったけど。
あした行けそうな場所をいろいろ教えてもらった。

野猿(やえん)にも乗ってみた。
谷瀬の吊り橋(たにぜのつりばし)も渡ってみた。
ちょっと散策してみた。
総じて楽しかった。
いい思い出ばかりになった。
最初のバス待ちはキツかったけど。

そんな十津川や五條がたいへんなことに。
遅ればせながら、とっても心配しています。
皆さんご無事でしょうか。

高橋まゆの小部屋12室

夢を見た。
ホントはもっと盛りだくさんだったが。
拾えるだけ拾ってみた。

スズメバチの巣。
たたいたら落ちて本の間に挟まれる。

自室に戻る。
虫だらけの床。
硬い黒い何かを踏む。
足を上げるとそれも虫。
そそくさと去ってゆく。
それを追って何かの速い影。
眠るのに苦労しそうな部屋だ。
でもボクの部屋だ。
どうしようか悩んでいる。

鍵を拾う。
友人が窓から示す。
ビルが見える。
あのビルの鍵のようだ。

ビル。
1Fホールでなめらかな革製の鞄を拾う。
前からほしかったような。
トラベラーズノートをしまう。

屋上。
なにか不思議な体験したような?
乗り出すとふわふわ落ちる。

舗道で寝ている。
上から和風テイストのテンポいいジャズ。
男の声の歌。
聴いたことがない旋律。
そして「早く行こうぜ」

意地で寝ている。
舟木和夫と舟木ユカのラジオ番組。
ユカはかわいい声。
番組終了のあいさつ。
風邪をひいているらしく最後に鼻水の音。

屋上に高橋まゆの小部屋12室。
狭い。
ある小部屋にはさらに6つのトイレ。
男が小さくなって用をたしていた。