よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録|梨木香歩角川書店|1400円|刊2004年04月|了2006年11月|100年ほど前の話でしょう。「無為」な時間を平気で過ごすことができる国トルコで暮らす村田という日本人。同じ下宿のドイツ人、ギリシア人、使用人のトルコ人、持ち主の英国夫人、そして鸚鵡たちとの生活はゆったり楽しげで、小さな神々や霊が日常生活の中にさりげなく現われる不可思議な下宿には、それでも文化・宗教の軋轢もありしかしこれらはいつか失われるであろう予感とともにどこか悲しい雰囲気もあり。そこには荷風の「ふらんす物語」の醸すような雰囲気もある。
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オンライン書店ビーケーワン:村田エフェンディ滞土録

評価「○」。

村田エフェンディに関する簡単なリストを下に置きます。


アオサギ】アフメット爺さんの甥がエジプトで死霊にとりつかれたらしいのだがトルコの霊媒師はアオサギの羽を一枚枕の下に入れるといいと言ったらしい。日本でもアオサギは特別な霊力のある鳥らしいが何かあるのでしょう。
【アフメット爺さん】何でも手に入れてきてくれる行商人。ムハンマドと仲がいい。驢馬を持っている。
アラービー・パシャ】エジプトの革命の士。
一神教】なかなか鬱陶しいものだが大勢の神がいると家の中が騒がしいので一神教がいいとディクソン夫人は思っているらしい。
【鸚鵡】ムハンマドが手に入れた口の悪い鳥。「悪いものを喰っただろう」「友よ」「いよいよ革命だ」「繁殖期に入ったのだな」「失敗だな」の五語しかしゃべらないのに天才的なあいの手を入れる達人(達鳥)。のちに「もういいだろう」という語も覚えた。「何時だと思っているのだ、静かにしろ」という語も覚えた?
【大市場/カパル・チヤルシユ】
【オットー】村田の隣の部屋に住むドイツ人の学者。顔がいかつく、西洋版仁王という感じなのだそうだ。シュリーマンのトロイ発掘隊に加わったことがあるらしい。
【カール】ドイツの発掘隊のリーダー。遺跡に呼ばれた幸福な人。
【木下】艱難辛苦を越えてペルシャ経由でトルコまでやってきた日本人。尻を痛めて寝込んでいる。村田と山田にお守りを押し付けて閉口させた。
【権利】当時の日本人には「権利」という概念すらなかったらしい。今では権利だけは主張する。
【高堂】村田や綿貫の友人でボート部の合宿で事故死したが、たびたび現われてくるらしい。
サラマンドラ】村田の下宿に住んでいたらしい。稲荷と仲良くなった。
【清水義勝】日本人の建築家。
シモーヌ】ハムディベー氏の娘か。
【スタンブール】主人公が滞在する、土耳古の都市。イスタンブールのこと?
【セヴィム】愛称セヴィ。若く魅力的なトルコ人女性。ディクソン夫人の古いなじみ。ヘジャーブで隠していないとその魅力でクラクラさせられるのでムラタは初めてトルコ人女性が姿態を隠す理由が分かったらしい。
【ディクソン夫人】裕福な英国人商人の年若い妻の母だが、娘夫婦が世情不安定ゆえに帰国した後もトルコに残り女性解放に立ち上がった?主人公の住む下宿屋も営んでいる。まっとうなキリスト教信者だが、もののわからない人ではない。
【ディミィトリス】ディクソン夫人の下宿に住むギリシア人でギリシアの考古学会会員。美男子なのだそうだ。何か秘密を持っているようだ。「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことはひとつもない……」
土耳古/トルコ】「無為」に耐えられる達人たちの国。主人公がやってきて「研究」生活を送っている。
【ハムディベー】スタンブールの総指揮官。欧州で教育を受けた人物でトルコ帽をかぶってはいるがあとは洋装。
【ハミエット】トルコの大市場に古道具屋をかまえる女性の霊媒師。
【村田エフェンディ】主人公。日本とトルコの友好のためトルコの歴史文化を学びに派遣された。ただ一人自分が選ばれたのはトルコ人に発音しやすい名前だったからではないかと自分で疑っている。ディクソン夫人の下宿で暮らす。ムハンマドに仏教とはと聞かれ、ひとこと「慈悲」と答えることができたなかなか頭の回転のいい男。ディクソン夫人の下宿では村田にいろいろ教授するのが流行しているらしい。
ムハンマド】ディクソン夫人のところの使用人か。昔の言い方なら「モハメッド」という名前なのだろう。表通りの錠前屋と不毛な戦争を日々繰り広げている。
【山犬の神】清水がカイロの市場で買った像らしいがどうやら本物だったらしく村田のいる下宿に持って帰ったらそのとき下宿にいるいくつかの神と勢力争いをしてなかなか騒がしい。
【山田】村田がトルコに来た頃に何かと世話を焼いてくれた人。
【呼ぶ】--俺は呼ぶんだ。/オットーはにやりと笑ってこちらを見た。そして、/--すると呼ばれる。/と付け足した。
【羅馬硝子】村田がドイツの発掘している遺跡で発見した。特別珍しいものではないが年代特定しやすいので重要らしい。
【驢馬】アフメット爺さんの驢馬。村田のいる下宿の壁をなめるのが好きで、いずれ壁に穴を開けるだろう。
【綿貫】村田の友人。高堂亡きあとその家をひとりで管理している。「家守物語」の主人公か。