よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「空の境界」奈須きのこ

期待していたほどおもしろくはなかったものの危惧していたほどひどくもなかったのでまずは上出来。

まずなにかが欠如し心が欠けかけている者たちが登場してくることによって人の心のありようがあきらかになってくるからにはこの作品は心の探求の書であるとは言わねばならずナイフ持ち存在しないものすら断ち切る和服の美少女は欠けた心のもたらす災厄を抹殺するのだが自身も欠けた心の歩きまわる災厄に違いはないのでこれはとても危険な匂いする小説になっているのだがそれにしてもなぜこんな解説(笠井潔)がこの本にくっついているのだろう?

(2005年10月16日読了)


幼い時分火見櫓に登ったことがあるのだけどそこで感じたのは高さへの恐怖には違いなかっただろうがいつもの世界ではない異界へでも足を踏み入れたような高揚と不安の宙ぶらりんでおぼつかなき位置でその場所もあるいは空の境界であって式の恐怖はそんな恐怖だったのかもしれずその梯子をどこまでも登ってしまうのかそれとも降りてしまうのか式。

(2005年10月22日読了)