よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

篠田真由美『建築探偵桜井京介の事件簿』

現在番外編の「櫻の園」を読書中。

ついいましがた読み始めた本。
建築探偵シリーズで脇として登場している神代教授のお話。
最初は、教授の友人が、一人で行きたいないほど恐れているらしい、桜咲き乱れる館への来訪のようだ。

建築探偵の各巻内容リスト

【1巻・未明の家】スペイン風の別荘で死んだ偏屈な老人、刺されたその息子。奇妙な雰囲気の建築に秘められた謎は?(2004.10.06読了)
【2巻・玄い女神】10年前インドで死んだ男の恋人だった元女優が関係者と京介を集める。(2004.10.20読了)
【3巻・翡翠の城】この著者過去の因果が今に報う横溝ふうだなあ。沼のほとりの碧水館は不吉な死がとりついている。(2004.10.25読了)
【4巻・灰色の砦】深春と京介が出会ったのは輝額荘という格安の木造下宿だった。いい雰囲気の中かなしい事件。(2004.10.31読了)
【5巻・原罪の庭】蒼の話。観察者は神代。温室に猟奇的死体と7歳の少年。記述避けてる入れ替わりがあるので謎は即わかる。京はMONSTER?(2004.11.07読了)
【6巻・美貌の帳】建築は鹿鳴館ということになるかな。大女優復活公演は三島の卒塔婆小町。あることで悩む蒼のため京介自分から探偵を。蒼には甘い。(2004.11.18読了)
【7巻・桜闇】短編集。大きなシリーズの中の作品としては意味を持つ。ゆるやかにつながりのある二重螺旋シリーズなども入ってる。(2004.12.05読了)
【8巻・仮面の島】蒼20歳。ヴェネツィア。富豪未亡人が隠遁している島に招かれた神代、京介、蒼たち。予想通りの展開だがまあまあ。(2004.12.19読了)
【9巻・Sentimental Blue】番外編。蒼11歳から20歳。朽ちかけた屋敷に住む老婦人と蒼の交流。高校のときの友人たちと出会った事件群。(2005.02.12読了)
【10巻・月蝕の窓】霊感少女輪王子綾乃17歳の忠告を無視しある建築にかかわった京介は事件に巻き込まれる。カーテンとスリーピング・マーダーのハーフ。いかにも篠田真由美さんっぽいテイスト。(2005.02.27読了)
【11巻・綺羅の柩】30年前のタイのシルク王トーマス失踪の謎を解くため日本の絹製造業者に京介と綾乃が呼ばれる。お姫さま熊を襲う。
【12巻・アヴェ マリア】「REMEMBER」と書かれたカードが届く。かつての凄惨な記憶をよみがえらせ、自己と向き合うことになる蒼。(2005.08.19読了)
【13巻・失楽の街】取り壊しが決まったモダンなアパート。同時期に東京中をおびやかす連続爆破事件。そしてついに蒼と翳が被害にあう。(2005.08.28読了)
【14巻・胡蝶の鏡】京介に異変。昼に起きていて、ジムに通い、掃除をし、食事をつくる。なんだか妙に上機嫌だし。不吉を感じる深春たち。(2005.09.18読了)

もう少しだけ詳しく

ずいぶん前に読んだ本。

スペイン風の別荘で死んだ偏屈な老人、刺されたその息子。
奇妙な雰囲気の建築に秘められた謎は?

インドでひとりの男が殺された。10年後、恋人だった女が洋館に呼び集めた者たち。その中に京介もいた。
熱におかされたような過去があばかれようとするとき…

なぜかこの人の作品では読みながらいっしょに謎を解こうとしない。ただ読んでるだけ。
容疑者たちのキャラや謎が弱いということもあるのだろうけど、ついふつうの小説として読んでしまうみたい。

以下は引用。

館までの深い森を通っているときの蒼のセリフ。まあ、アプローチって大事やもんね。

山は異界さ(p.28)

玄い女神ってパールヴァティーのこと?「3×3EYES」やね。あれ?今不意にカーリー・ドゥルガーって名前が浮かんできたんやけど、なんやったっけ……。ああ、「敵は海賊」の宇宙船の名前か。これは、女神の名前やったっけ?

その視線は遠い。なにかを探している目だ(なにか、ここにはないものを……) (p.33)

ぼくはよくこういう目をするそうです。ただの放心状態なだけなんですけどね。

でもカリの望みは叶える。それが私の法(ダルマ)。(p.126)

自分のダルマって持ってないからなあ。そういう人には憧れちゃう。たとえそれが歪んでいたとしても。

ずいぶん前に読んだ本。

 「建築探偵桜井京介の事件簿」第三弾。

沼のほとりに立つ、洋風の建物に和風の瓦屋根を乗っけたような碧水閣は不吉な死がとりついている。
果たして呪われた建築なのか?
名前だけ出ていた神代教授もついに登場。

あいかわらず読みながら推理する気にはなれない。結局、事件などはどうでもいいのでしょうね。じっさい、わりとおざなりという気もするし。事件は物語のきっかけにしかすぎない。物語のほんの一面のあらわれにしかすぎない。そして、物語は人間たちのうごめきの物語だ。

ずいぶん前に読んだ本。

過去の話。今回の物語を見る役は深春ちゃん
かれが京介と出会ったのは、格安の木造下宿「輝額荘」だった。
いい雰囲気で学生生活を過ごしていた中、悲しい事件が…

ずいぶん前に読んだ本。

ついに蒼の過去になにがあったかわかる巻。
物語を見る役、今回は神代センセ。

巨大な温室で猟奇的な死体と7歳の少年が見つかった。
みんながいろいろ推理するのだけど、それだけ避けられているというトリック(?)があるので、すぐに仕掛けはわかるでしょう。
もっとも、このシリーズは推理そのものよりも、やはり人間のことが描かれているのです。

ずいぶん前に読んだ本。

今回の建築は鹿鳴館
物語を見る役は蒼と、京介自身(初)。

かつての大女優復活公演は皮肉にも三島由紀夫の「卒塔婆小町」。
演出家行方不明の原因が自分にあるのではと悩む蒼を救うため京介、ついに自分から乗り出す。蒼には甘い。

それにしても、蒼くんだけにはシアワセになってもらいたいものです。
京介が将来なにをしようが、深春がどこかでのたれ死にしようが、神代センセが結婚しようが、それらはどーでもええんですが。

ずいぶん前に読んだ本。

短編集。
大きなシリーズの中の作品としては意味を持つ。
ゆるやかにつながりのある二重螺旋シリーズなども入ってる。

ずいぶん前に読んだ本。

蒼20歳。
ヴェネツィア
富豪未亡人が隠遁している島に招かれた神代、京介、蒼たち。
予想通りの展開だがまあまあ。

ずいぶん前に読んだ本。

番外編。京介たちは出ない。
蒼11歳から20歳。
朽ちかけた屋敷に住む老婦人と蒼の心の交流。
そして高校のときの友人たちとともに出会った事件群。
蒼くんのかわいらしさに涙?

ずいぶん前に読んだ本。

霊感少女輪王子綾乃17歳の忠告を無視してある近代建築にかかわった京介は殺人事件に巻き込まれる。それは京介自身を見つめる旅でもあった、なんてね。
トリックも真犯人も簡単やとは思うけどそんなんはどうでもいいかと。

ずいぶん前に読んだ本。

建築探偵桜井京介シリーズ番外編。

「REMEMBER」と書かれたカードが届く。凄惨な記憶をよみがえらせ自己と向き合うことになる蒼。
蒼が主人公だとどうしてもせつない感じになってしまう。
保護者たちが心配そうにうろうろしてんのが可笑しい。

ずいぶん前に読んだ本。

取り壊しが決まったモダンなアパート。
最後のイベントで上演予定の劇なのに主催のグラン・パが行方不明。
同時期、東京中を震撼させる連続爆破事件。
そして蒼と翳が被害にあう。

ずいぶん前に読んだ本。

京介に異変。昼に起きていて、ジムに通い、掃除をし、食事をつくる。なんだか妙に上機嫌だし。不吉を感じる深春たち。

建築は伊東忠太とヴェトナム。前に、山形新聞にこの人についての連載がありますね。楽しみに読んでました。地元ではないですが仕事で読めるのでラッキーでした。

物語は、かつて深春たちが親から反対されている結婚に協力した四条家の彰子姫に離婚の危機。ふたたびヴェトナムへ。



下に建築探偵についての簡単なリストを置きます。


【蒼】桜井京介の助手のようなことをしている少年。凄惨な過去があるらしい。超絶的な記憶力を持っている。
【遊馬朱鷺】感情の起伏の激しいねえちゃん。
【安宅俊久】元W大教授。朋潤会牛込アパートメントに住む。
【安宅春彦】安宅俊久の息子。子供の頃亡くなったらしい。
伊東忠太】実在の建築家。アジアの建築探訪に放浪した。奇妙な建物を作り続けるわりに建築界のドンになったらしい。趣味で?妖怪画を描いていたらしい。その妖怪画とやらは見てみたい。個人的にはこの人の建築物はさほど好きではない。「胡蝶の鏡」で青年に絵を描いてやっていたのが伊東忠太か。
【岩槻修】16歳の家出少年。自分の書いた詩を日野原醍醐にバカにされ萩原朔太郎の記念館に爆弾をしかけ出奔したらしい。
【インターネット】仮想のつながり、仮想の知識。やっかいなのはリアルにも転化しうること。この作者はあまり好きではないのかもしれない。
【漆原匠馬】工藤迅の幼なじみの警部補。34歳(2001年4月現在)。
【大島庄司】神代と仲のよいW大教育学部教授。尾羽打ち枯らしたジョン・レノンのような格好を好む。冬でもTシャツにブルージーンズ、突っかけサンダル、すり切れた白衣をひっかけ、肩まである白髪を輪ゴムでひとつにくくり、メガネをかけている。
【大島晴美】大島の母。白の衣服にこだわっている女性。桜館に行っていた頃のニックネームは「ウサギちゃん」だったそうだ。チェーンスモーカーだった。離婚後再婚して現在はニューヨークで仕事をしている。現在の姓が大島かどうかはわからないが、便宜上。
【巨椋星弥】カッチョイイ女性。カリスマ性あり。
花王緋沙江】10年前引退した新劇女優。本名目黒久江。「桜館」に登場。40代で通りそうな67歳。優美さとがさつさを併せ持つ。
【神代清顕】神代宗の義父。宗の実姉の結婚相手だが子供ができなかったので宗が養子になった。宗との間はぎこちなかった。病弱を理由にW大の教授を辞め女子短大の講師などをやっていた。
【神代宗】W大の教授。京介や深春の先生。蒼を見守る。口を開かなければダンディな渋いオジサマ。口をひらけばべらんめぇの江戸っ子。
【河村千夏】深春と京介がハノイの空港で出会った女子大生。そのままレ家の件に首を突っ込んでくる。なにか見たままでない秘密がありそうだが…。
【輝額荘】京介と深春が出会った下宿。かなしい事件が起こった。
【北詰準一】朋潤会牛込アパートメントの保存運動をしていた建築家。子供時代にそこで暮らしていたことがあるらしい。
【空想演劇工房】蒼がお手伝いしている劇団。
【グェン・ティ・ナム】ティンの健康管理してるおばちゃん(女医)。えらそうな人。
【工藤迅】群馬県警の刑事。巨椋(おぐら)家事件のときに関わった。34歳(2001年4月現在)。
【グラン・パ】祖父江晋の別称。蒼などはこう呼ぶ。
【栗山深春】お人好しな森のクマさん。ふだんは演劇の手伝いなんてしてるプー太郎。クマのプーさんか。京介の大学の同級?同じ下宿で暮らしていたこともある。お金が貯まると世界のマイナーどころに貧乏旅行に出かける風来坊。ある意味たよりになります。
【結末の予想】このシリーズはハッピーな終わり方はしそうにない。終わりがあるとするのなら、桜井京介が蒼の前から姿を消すときかも。それは彼の死か、彼の殺人か、それとも単なる行方不明か。
【甲野伸司】大島の実父。10年前に亡くなっている。
【心】この物語はミステリではあるのだけど、心のひだを解き明かそうとするところである意味純文学に堕していると言える。特異な(マンガかゲーム的な)キャラクタたちのせいで純文学っぽくは見えないのだが。作者の興味が人の心にあるようなのでしかたないか。
【小城里花】W大の学生でフリフリで自己中心的でちょっとお近づきにはなりたくない24歳の女の子。
【桜井京介】建築を研究している学生。のちにフリーの研究家。超然として冷酷だが蒼には甘い。なにか過去があるらしい。殺人を犯す可能性を秘めているのかもしれない。桜井京介が殺人を犯したとしたら、蒼には答えが導き出せるようにするような気がする。その気になれば完全犯罪も難しくないだろうけど、あれこれヒントを残して。
【桜館】神代センセの話で出てくる館。大島の親戚の家。目黒高陽(たかあき)という人物が建てた桜の印象的な館。母親の違う三人の女が姉妹として暮らしていた。
【四条彰子(あきらこ)】深春が随行したヴェトナムツアーのお嬢様たちの一人。
【ジャック】ヴェトナムのレ家の離れで自殺した(らしい)青年。日仏の混血らしい。伊藤忠太の案内をしていた。美青年のようで伊藤から夢野胡蝶之助とあだ名された。
【春原リン】劇団「空想演劇工房」の女優にして祖父江晋のパートナー。安宅俊久とも知り合い。「春原」は「すのはら」と読む。
【祖父江晋】劇団「空想演劇工房」主宰。「グラン・パ」ってこの人やっけ?
【辰野】神代教授の中高時代からの友人。当時はカッコイイ剣道部員。T大医学部を出た秀才。現在は小児科医。クールで無口で頭が切れる。京介に近いタイプと思われる。
【探偵】桜井京介は抜群の頭脳のキレのせいで望みもしないのに事件の探偵役をさせられることが多い。
【チャム】レ・グオック・マインの二人の娘の妹の方。はっきりしたもの言いのおきゃんな性格。
【トゥハー】レ・グオック・マインの二人の娘の姉の方。いくらか分別があって穏健。
【遠山蓮三郎】京介なんかと知り合いみたいなちょっと軽くてとぼけた感じの兄ちゃん。大きな旅館の息子。バーテンの修行なんかもしてる。遊馬朱鷺のことが好きみたい。蒼の苦手な人物。
【刀根老人】輪王寺綾乃のお守り役。
【ハッピーエンド】《物語ってやつは絶対に、ハッピーエンドでなくちゃいけない。そうでない物語は欠陥品だ。あるいは本当の結末にたどりついていないのだ。》(胡蝶の鏡)p.309 建築探偵シリーズはハッピーエンドになるのでしょうか…?
【日野原奈緒群馬県会議員日野原醍醐の姪。13歳。従兄弟の岩槻修を探している。
【朋潤会アパートメント】関東大震災後の東京に良質の住宅を供給するための財団法人が建てた鉄筋コンクリート造のアパート。当時東洋一の先進的な設備と言われた。
【松岡さん】近所の図書館の気さくな館員。妻子のある男性の子どもを妊娠してしまい…
【道子】桜館のメイド。若くて元気で力持ち。
【美杜晃】かおる母さんとみちる母さんの父親。
【美杜杏樹】蒼の生まれたときの名前。
【目黒鏡子】阿弥陀如来のような、恰幅のいい老女。
【目黒高子】細い老女。少女のような高い作り声で話す。
【門野貴邦】謎の大立者。なぜか蒼を気にかけ後見してくれている。美杜家の番頭のようなことをしていたこともあるらしい。かおる母さんを愛しているらしく保護してくれている。
薬師寺かおる】蒼の母。事情があってなかなか会うことはできない。
薬師寺香澄】蒼の戸籍上の名前。なぜこの名前になったのかは…。
薬師寺静】薬師寺香澄の父。身勝手で女好きな独裁者。
薬師寺みちる】かおる母さんの妹にして蒼の父親の配偶者。
【結城翳】蒼の高校時代からの友人。両親は音楽家らしい。M学院大学生。
輪王寺綾乃】霊感美少女。けっこう信奉者が多い。京介と互角に対することのできる希有な人。
【レ・ヴァン・タン】四条彰子の恋のお相手。レ・ヴァン・ティンの孫。レ・ホン・ロンの兄。ハノイ歴史博物館館員。
【レ・ヴァン・ティン】レ家の跡継ぎ。ジャックの死んだ直後を発見する。
【レ・ヴァン・トゥー】四条彰子の息子。日本名は直(すなお)
【レ・グオック・マイン】レ・ヴァン・ティンの息子。ヴェトナムの政府高官。
【レ・ティ・ロァン】ティンの姉。アメリカで91歳まで生きた。
【レ・ホン・ロン】ティンの孫。医師。手記を翻訳した。彰子とともに日本に。日本語は流暢。レ家の者なのでフランス語も。

年譜(不完全)

【1963年3月】深春誕生。
【1986年08月】薬師寺家事件。蒼7歳。
【1989年】蒼、京介と出会い(再会)、神代家で暮らしはじめる。
【1995年】巨椋家事件。
【1997年03月】深春、お嬢様短大の卒業旅行の付き添いでヴェトナムにツアー。
【1999年04月】蒼、W大に入学。
【2000年】蒼、小城里花と出会ってしまう。
【2000年11月?】軽井沢の事件。
【2001年04月】「失楽の街」。
【2001年12月】京介と深春、行方不明の彰子姫捜索のため?ヴェトナムに。