よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

2004-06-09から1日間の記事一覧

空のかなたで

雲に乗って遊ぼう 雲さんは思いました こいつは なんで落っこちないんだろう

猫ですから

山上の 吹雪の中から 猫は世界を覗いています

ピエロ

少年が旅をしていました いつも ピエロの人形が肩に乗っています ものごころついた頃からの相棒です なあおまえ いつまで役立たずの旅人でいるんかい そうだね ピエロが役立たずでなくなるまでかな はっ それは無理なはなしだぜ だっておいらは ピエロだから…

湖の魔女

水底の魔女は ちょっと涙を落としてみたが 水の中なので だれも気づきません もっとも それ以前に 周りにだれもいないのです だから 薄うくほほえみました

森の写真館

はいパチリ できあがりまで ちょっと待っててくださいね そう この葉っぱが ちょうどいい大きさに生長するまで いま 写真の種を蒔いたとこですから

森の喫茶店

木の実の珈琲 どうぞごゆっくり 根をはやしても いいですよ

鈴ヶ森

鈴ヶ森では 珍しい石が採れます うすく うすうく 削ったらば 蒼みがかって透明な ガラスに変じるのです この石で作ったコップに 水をそそぎましょう コップは小さくふるえ チリチリ 鈴の泣くような きれいな音がするのです

夜が明けるまで

街灯はかたちだけ 夜になっても ともりません でも ときおり 星や月が 休みにきますので そのときだけ 道があかるくなります

やっかいなヤツ

湖にうつる まんまるい 月の中で 男の影が踊っています ひょーん ひょーん痩せっぽっちの影 ひょろながい手足を ぶらんぶらんさせて 男は 逃げ出した死体を追って ここまで来たと言いました

森の喫茶店

木の実の珈琲 どうぞごゆっくり 根をはやしても いいですよ

森の写真館

はいパチリ できあがりまで ちょっと待っててくださいね そう この葉っぱが ちょうどいい大きさに生長するまで いま 写真の種を蒔いたとこですから

街角のいねむり一家

ヤマネさんちは 昼間から いつもどおり シアワセそうに眠っています 道ゆく人々がほほえんでいます あ あまり近寄らないで 起こしてしまうのが気の毒だから? いえいえ かれらのシアワセがうつって あなたまで眠りにおちてしまうから

ランプ

わたしはもうすぐ 永遠の夜に旅立ちますので このランプはさしあげましょう あなたが 夜をたのしみしているかぎり 起きていたいことがあるかぎり 暗くなると 勝手にともる便利なものです

ホシノツリガネソウ

黄色い 星の形をした花が咲きます 暗くなると ぼんやり光って ゆらゆら揺れています ときどき イヤシイ猫が パクッ 食べてしまいます 猫は パチパチ 火花を散らしながら 夜空に昇っていって お星さまになってしまうのでした ああ でも心配しないで じき もと…

青い箱

ふかい 群青色の箱でした だれも開けることができませんでした なにが入っているかわからないので みんな開けたがりました 博士さんがいいました よした方がよいよ その箱にはおそらく 宇宙が入っておるのじゃ なにが起こるかわからない さて だれがあけてし…

探偵物語

探偵さんが深夜の散歩を楽しんでいます 月明かりに浮かぶ石畳 人々が集まっています 見ると 男が一人倒れています 何者かに殴られて昏倒したとか黒い服の警官が言いました これは探偵さん この男は酔っぱらいです いい調子で歌いながら歩いていたらしいです…

ペンペン草

あるくペンペン草たるわしは ながいこと 旅してきたあるくペンペン草たるわしは あるいていると ちょいとめだつ じっとしていると ただの ペンペン草

湖の魔女

水底の魔女は ちょっと涙を落としてみたが 水の中なので だれも気づきません もっとも それ以前に 周りにだれもいないのです だから 薄うくほほえみました

猫ですから

山上の 吹雪の中から 猫は世界を覗いています

博物館

博物館には およそありとあらゆるものが 集められています ただ あなたのもの以外でも その博物館には あなたのものしかありませんでした

ピエロ

少年が旅をしていました いつも ピエロの人形が肩に乗っています ものごころついた頃からの相棒ですなあおまえ いつまで役立たずの旅人でいるんかいそうだね ピエロが役立たずでなくなるまでかなはっ それは無理なはなしだぜ だっておいらは ピエロだから少…

タビビトたち

この辺では モノを それほど持ちません気に入っているトランクに 入るていどのモノ それだけで暮らしますイエノキが枯れたりしたとき いつでも 去っていけるように でしょうか

イエノキ

これはイエノキという木です 太くて低い木です 中は虚になっています 人が住みつくのに ちょうどいいうまく育ったイエノキには ベッドや 棚すら あったりしますでも イエノキは 寂しがり屋です 一度人が住んだイエノキは その人が去ると じきに枯れてしまい…

愛は種族を超えて

ある場所に たたずんでいるその石は 石を愛したので 石になってしまった娘です ちがうわよっ 水晶の像に恋して 水晶になった美女よっ だそうです まあ 同じことですが ちがうわっっ!!

やっかいなヤツ

湖にうつる まんまるい 月の中で 男の影が踊っています ひょーん ひょーん と踊っています 痩せっぽっちの影 ひょろながい手足を ぶらんぶらんさせて 男は 逃げ出した死体を追って ここまで来たのですが…

夜が明けるまで

街灯はかたちだけ 夜になっても ともりません でも ときおり 星や月が 休みにきますので そのときだけ 道があかるくなります

入り口それとも

コンビニで そこはかとなく珍しいものを 見たとき たとえば… 黒猫がケースの前で どのコーヒーにしようか 悩んでいたり そんなとき 入り口は開かれています あちらに入るかどうか あるいはあちらに出るかどうか (ふたつは同じこと) あなたしだい

森の本屋

緑色の蔭に隠れている本屋には 絵本と 画集と 詩集しか 置いていません 絵のない本は本じゃないよ 主人はそう云います 思い切ったセリフです 詩は 言葉で描かれた絵だからね かまわないんだけど そんなことを云います

ラクガキ

けむりビル そんな奇妙な名前の廃ビルで ラクガキに話しかけられました オイラは たどたどしく書かれたラクガキさ ゆれる線で ちょっと躍ってみる チッチッチッ… シンプルなやつだからって バカにしちゃあいけない アタマのなかは いろいろ線がからまってる…

さまよう滝

その滝は いつどこから流れ落ちるのか だれにもわかりません このあいだは 森にほど近い 廃墟の窓から落ちていました