よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

探偵物語

探偵さんが深夜の散歩を楽しんでいます
月明かりに浮かぶ石畳
人々が集まっています
見ると
男が一人倒れています
何者かに殴られて昏倒したとか

黒い服の警官が言いました
これは探偵さん
この男は酔っぱらいです
いい調子で歌いながら歩いていたらしいですが
さきほどほんの短い間
月が隠れ暗くなったとき殴られました
犯人はまだ遠くには逃げていない
かならずつかまえます
そう言いました

探偵さんはあたりを見渡して
にやりと笑いました
いや
捕まえるのは無理でしょう
ヤツはもう
我々の手の届かない場所にいる

いえそんなことはありません
事件は起こったばかりなのです

わけを話しましょう
今宵の月は静けさが好きなのです
犯人はほれそこに浮かぶ月なのです

そこでお月さまも
にいやり笑いました