よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

2004-06-09から1日間の記事一覧

鈴ヶ森

鈴ヶ森では 珍しい石が採れます うすく うすうく 削ったらば 蒼みがかって透明な ガラスに変じるのです この石で作ったコップに 水をそそぎましょう コップは小さくふるえ チリチリ 鈴の泣くような きれいな音がするのです

銀の谷

ゆくりと 星が降りてきました 地上すれすれで止まると ぱあっと かがやく粉となって 散るのです 真夜中になり ぼんやり発光している 銀の谷は 星の墓場です

夢見ひと

この辺の人びとは 夢とうつつの区別をあまりつけません

ひらひら ゆるゆる

博物館の 赤い瓦の屋根に おおきな月がひっかかる夜 前庭では 少女たちが 白い ひらひらした服で ゆるうい 踊りを 踊っています

空のかなたで

雲に乗って遊ぼう 雲さんは思いました こいつは なんで落っこちないんだろう

川のお酒工場

この川には みんなの 睡りからこぼれた 夢が流れてきます だから 失った夢を思い出したい人は このお酒を飲むのです

森のたばこ工場

職人さんが一生懸命 空気を集めています だから うす緑いろの紙で包まれた このたばこのけむりは ふかい森の薫りがするのです

イエノキ

これはイエノキという木です 太くて低い木です 中は虚になっています 人が住みつくのに ちょうどいい うまく育ったイエノキには ベッドや 棚すら あったりします でも イエノキは 寂しがり屋です 一度人が住んだイエノキは その人が去ると じきに枯れてしま…

タビビトたち

この辺では モノを それほど持ちません 気に入っているトランクに 入るていどのモノ それだけで暮らします イエノキが枯れたりしたとき いつでも 去っていけるように でしょうか

聖堂(うす闇の国)

森は暗く ときおり ふっと風がふき 樹々のはざまから 空の蒼 雲の白 かすかな かがやき 木は巨きいのですが 葉は樹冠部だけにあります ここは 高い柱にかこまれた 聖堂のようです 森の精気が もやとなって ただよっています こしかけていると 一日じゅう そ…

うす闇の国

森の奥 人の顔もはっきりとは見えない ほの暗い国が あるそうです どことなく 落ち着けそうです

波動

ときおり 森の奥から 世界の深みから 見えぬ波が放たれます からだを過ぎるとき 喜ばしさ そして 畏れが 同時に通り抜けていきます 都会(まち)に住む人々は 波が嫌いのようです

森の本屋

緑の葉蔭に隠れている本屋には絵本と画集と詩集しか置いていません絵のない本は本じゃないよ主人はそう云います思い切ったセリフですだけど詩は言葉で描かれた絵だからねかまわないんだけどそんなことを云いますここは「森の屋台本屋」の本店。実際はここま…

猫ですから

山上の吹雪の中うずくまって猫は世界を覗いています

こんにちは くまさん

くまさんのすう たばこは やわらかいけむりをだします

森のたばこ工場

職人さんが一生懸命 空気を集めています だから うす緑いろの紙で包まれた このたばこのけむりは ふかい森の薫りがするのです

ピエロ

少年が旅をしていました いつも ピエロの人形が肩に乗っています ものごころついた頃からの相棒です なあおまえ いつまで役立たずの旅人でいるんかい そうだね ピエロが役立たずでなくなるまでかな はっ それは無理なはなしだぜ だっておいらは ピエロだから…

イエノキ

これはイエノキという木です 太くて低い木です 中は虚になっています 人が住みつくのに ちょうどいい うまく育ったイエノキには ベッドや 棚すら あったりします でも イエノキは 寂しがり屋です 一度人が住んだイエノキは その人が去ると じきに枯れてしま…

闇色万年筆

あ万年筆のインキが切れましたちょいと窓を開けてスポイトで夜を吸い込んで…

三日月万年筆

万年筆のペン先は三日月のカケラですだからときおりたばこのけむりがにじむのです

川のお酒工場

この川にはみんなの睡りからこぼれた夢が流れてきますだから失った夢を思い出したい人はこのお酒を飲むのです

タビビトたち

この辺ではモノをそれほど持ちません愛用のトランクひとつに入るていどそれだけで暮らしますいつでも気らくに去っていけるようにでしょうか

湖の魔女

水底の魔女は ちょっと涙を落としてみたが 水の中なので だれも気づきません もっとも それ以前に 周りにだれもいないのです だから 薄うくほほえみました

茜色の絵の具

夕焼け絵の具に取って お絵描きしたよ 世界は かがやいていました