よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

ピエロ


少年が旅をしていました

いつも

ピエロの人形が肩に乗っています

ものごころついた頃からの相棒です

なあおまえ

いつまで役立たずの旅人でいるんかい

そうだね

ピエロが役立たずでなくなるまでかな

はっ

それは無理なはなしだぜ

だっておいらは

ピエロだから

少年がとてもせつない恋をしました

でもピエロは軽口をやめません

だって

おいらはピエロだから

恋をうしなったとき

少年はしだいに弱り

ねえピエロ

ごめんよ ぼくはもうだめみたい

なあおまえ

死んじゃあ役立たずでなくなるかもな

なにものでもなくなるからなあ

よかったじゃあねえか

少年はこの世から消えてしまいました

ピエロはながい日々

木の寝っこに打ち捨てられ

身動きひとつしません

そしてひとりごちました

おいらはピエロ

悲しゅうない