よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「昴」曽田正人

神か悪魔に導かれたような狂気と紙一重の曽田キャラの中でもとり憑かれ度ではトップかもしれない舞姫昴の物語が今始まる。


欠員の代役とはいえ昴はとうとう本格的にバレエ界に乗り出すことになる。
しかし他人に合わせて踊ったことがなかったので「白鳥の湖」の群舞に苦労し奇妙な特訓をする。
日比野社長の正体?もわかったり。
昴はつねに最適な出会いをする。
あるいは最悪の。

(2006年07月03日)


初舞台が始まる。
たったひとりで進化していってしまう昴を前に振り付け師の熊沢はお前はいつかひとりっきりになってしまうと懸念した。

あるとき自分の踊りを見て子どもが泣き出してしまう。
もともと弟を元気づけるために踊りを始めたのだからショックを受け、踊りをやめようとすら考える。
昴は公園で楽しそうに踊るヒップホップ系のダンサーたちと出会う。

ライバルのタカコが本格的に絡んできはじめる。
彼女のアドバイスで昴はローザンヌに出ようと考える。
でも彼女にはコンクールやらバレエ学校やらは合わないだろう。
彼女のようなタイプは、いつも今いる場所ではない場所をめざしてしまい、型からはみ出ようとするだろう。
特に彼女はスピードが速すぎる。

曽田さんはいつも速すぎる者を描く。
いくらか狂気じみたほどの速さを。
その恐ろしさを。

(2006年07月08日読了)


ローザンヌが始まる。

ワーニャの本当の弟子カティアの影を感じながらヨーロッパ人より100歩遅れたところからスタートする昴のローザンヌ制圧への挑戦が始まる。

そんなさなかに起こる最悪の出来事。

そして昴がついに達した、ベスト・コンディション「生まれてから、最高の状態」とは?

《あたしの望みはたったひとつ 自分が…本当の自分でいられるところへ行きたい》

《今までだってあたし、どこかで喜んで迎えられたことなんてなかったよ》

《あたしはどこの国の人でもない》

(2006年07月22日読了)


意識が飛びかけ即入院しなければならないほどの不調の中でスバルはローザンヌという大会を食う。

恐怖感を覚えるほどの舞台のシーン。

(2006年08月13日読了)


ローザンヌでの特典を蹴った昴のニューヨークでの生活が始まるがあまりのイメージの落差に愕然とするものの昴の存在が少しずつ「システロン・バレエ・カンパニー」を変えていきそんなとき刑務所でのボランティア公演が決定しそれはあらゆる演者がイヤがるような観客なのだった。

(2006年11月19日読了)


刑務所公演は異様な盛り上がりを見せたあげく凄惨な終わりを遂げる…。
昴は神か悪魔かという疑問を抱く団員たち。
はたして成功と言えるのか?
その記事を読んだNYバレエ界に君臨する女王プリシラ・ロバーツが昴に興味津々。

(2006年11月23日読了)





プリシラとのボレロの競演は終わる。
互いの航跡を残しながら。

そんなとき不法就労問題が持ち上がりFBI捜査官アレックスと昴が出会う。

息づまるようなボレロの後日譚。
昴が次にどこに行くのか、そのひと押しとなるエピソード。

(2007年01月13日読了)


昴に関する小さなリストを下に置きます。


【アレクサンダー・シン】FBI捜査官。予知能力者?じつは数学者。昴を調査するよう命じられた。一目で昴のことを見抜いた。《本当は心のどこかで思ってるのさ。〝べつにここじゃなくてもいいや〟って。》《きみには想いのつまった土地もない。人を愛してもいない。なんか自分はチガウ、って違和感だけ……》それは彼じしんのことでもあった。
【イワン・ゴーリキー】ロシア人のバレエコーチ。おばちゃんが紹介してくれた。神が降りてくる瞬間は自分で作らなければならないと教える。昴すら怖がるナイフのような男。ボリショイ・バレエの英雄。まだ現役で、ずっと抑えてきた自分をすべて出し切れるパートナーを探している。それはカティアなのか、昴なのか。
【エトワール】フランス語で直訳すると「星」。パリ・オペラ座バレリーナの頂点に立つ者。
オペラ座パリ・オペラ座。バレエの頂点にある劇場と、日比野社長は思っている。
【和馬】昴の双子の弟。脳腫瘍で入院中。
【カティア】イワンをして「神が全てを与えた」と言わせた。イワンにとって昴ですら彼女へのあて馬に過ぎない。
【清子先生】タカコの先生。昴初舞台の白鳥の湖でオデット姫を演じた。
【熊沢】日本現代舞踏協会の振り付け師。日比野社長の若い頃の知り合いらしい。白鳥の湖を物足りなく思っていたが…。
【呉羽真子】真奈の母。バレエ教室を開いている。
【黒猫】昴と和馬の絆のひとつ。昴をパレ・ガルニエに導いたのも黒猫だしキーになる存在ではある。
【コーヘイ】ティッシュくばりの青年。タカコといっしょにいたのもこいつだろうと思う。和馬が成長したらこんな感じになるのでは、と昴は感じた。
【コール・ド・バレエ】群舞。一糸も乱れぬシンクロ率で大勢のバレリーナが踊る。昴にこれをやらせたら他の人々はもうエライ目にあう。
【ザック・ジャスパー】マリ=クロードとともにローザンヌを見に来ていた男。ニューヨークのバレエ団「システロン・バレエ・カンパニー」で自分たちのところに昴を欲しがっている。たぶん、こいつらのところに行くなあ。
【サリュー・ジル】緑地公園でパフォーマンスを見せる人気ナンバーワンのヒップホップ系ダンスチーム。リーダーはタク。
【椎名】日本現代舞踏協会の人。
【システロン・バレエ・カンパニー】昴をローザンヌから奪い取った?ニューヨークの弱小バレエ団。
【社長】→日比野五十鈴
【昴】天才ダンサー。5月1日生まれ。和馬を笑わせるために死なせないために踊り始める。《思ってたより、ずうっと面白そうな世界だ!!》。バレエ以外すべてを切り捨てたように踊る。《ダメだったときは…いいの。あたしはそれで終わりで いいの。》きっぱり。曽田さんの登場人物ですねえ。ゾクッとします。
【春原多香子(すのはら・たかこ)】なんだか登場からしてライバルっぽい。和馬似の青年といっしょにいるし。昴の初舞台の群舞の段階で昴の存在に気づく。ローザンヌに一緒に出ることを勧める。昴とは正反対の人生を楽しむおおらかな余裕あるバレエを踊る。バレエをしていなくても誰もが惹きつけられる少女。
【聖ポウル病院】和馬が入院していた病院。
【タカコ】→春原多香子(すのはら・たかこ)
【タク】ヒップホップ系のカリスマ・ストリート・ダンサー。有名ミュージシャンのバックダンサーをしていたとのウワサ。昴とダンス・バトルをすることになる。
【ダンス・バトル】ヒップホップ系で相手の踊りをトレースし合うことを競う。
【パレ・ガルニエ】黒猫に導かれた昴が行った場所。7年後中学生の昴はここで踊っていた。酔客相手に踊りを見せるいかがわしい場所。男バレリーナのストリップ劇場?
【日比野五十鈴】「パレ・ガルニエ」の経営者。《人をおしのけたり、傷つけたり…なんにせよ、本当にやりたいことを貫くってのは、痛みをともなうもんさ。だから大概の人は本当にやりたいことを、見て見ぬふりしながら、そこそこの人生をおくる》。以前はけっこうすごいバレリーナだったらしい。
【ヒロミ】ダンス・チームのフライング・フィンのリーダー?気さくな女性。
フライング・フィン】緑地公園に集まるヒップホップ系ダンス・チームのひとつ。あまりレベルは高くないらしい。
プリシラ・ロバーツ】名門ニューヨーク・シティ・バレエプリンシパル。観客の感情を自由に操ることができると自負しているバレエ界の最高峰。宇宙人とでもコミュニケーションを取れると言った人もいる。しかし自分のできないことを昴がやっていると気づき、興味を抱く。昴にとってラスボスに近いところに位置している人物だろうと思われる。
ボレロプリシラはとうとう神に許された、と思った。「〝ボレロ〟に準備はいらない。ただ許されるのを待つだけ。ダンサーには二種類しかない。〝ボレロ〟を踊ることが許されたダンサーとそうでないダンサー。」byプリシラ
【円】日本現代舞踏協会の人。
【真奈】昴の同級生。バレエ教室の娘。和馬のことが好き。昴のライバルになれるでしょうか?少々スケールが小さいようですが。少なくとも昴のことをライバル視しているが昴の方はそれほどには思っていなくて、むしろなついていて、つい真愛の方が助け船を出して励ましたりして損をする。
【マリ=クロード】ザックとともにローザンヌを見に来ていた女。「システロン・バレエ・カンパニー」の団員。
【宮本和馬】→和馬
【宮本昴】→昴
【吉田ひとみ】NYにダンスの練習に来ていた18歳の関西弁の娘。
ローザンヌ国際バレエコンクール】若手バレエダンサーの登竜門。ここで賞を取れば好きなバレエ団の付属学校に学費免除で留学できる。毎年(?)NHKでTV放送しています。なかなか面白いです。この番組でわりとバレエを見る目が育てられました。あるていど善し悪しがわかるようになりました。
【ロビー】昴から強盗しようとした青年。じつは「システロン・バレエ・カンパニー」の団員。後に昴に惚れたようだ。
【ワーニャ】→イワン・ゴーリキー