よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

シートン探偵動物記

シートン探偵動物記│柳広司│光文社│1600円│刊2006年05月

動物が解いた謎、動物に関わった数々の事件をロサンゼルス・タイムスの記者である「わたし」がシートン老にインタビューする短編ミステリ集。

シートン氏は、つい反射的に相手のことを観察し、行動を推理してしまう。「そうでなければ野生動物というのは、何一つ本当の顔を見せてくれないものなのですよ」
なるほど、動物学者はすべからく探偵ですね。あのシートンが探偵であることにはなかなか説得力があります。

小・中学生時の愛読書のひとつ、そして今もときおり読むことがある「シートン動物記」の仮想裏話集はいきいきとシートンの姿を浮かび上がらせ、より身近にしてくれました。

評価「○」。

シートン探偵に関する簡単なリストを下に置きます。


【アーサー】シートンの長兄。
【アダムス夫人】シートンを動物関係の私立探偵と勘違いして猫のロイヤル・アナロスタン探しを依頼してきた。
【ウィリー】でぶのウィリーと呼ばれる嫌われ者。
【オールド・デューク】シートン幼少の頃家にいた雄ヒツジ。突進してくる。
【カランポーの悪魔】→ロボ
【キャメロン夫人】宝石で飾り立てられたような金持ちで俗物の女性。ダイヤが盗まれたと騒ぎを巻き起こした。
【銀の星/シルバー・スポット】歳経た賢いカラス。右目と嘴の間に銀白色の部分がある。カナダのトロントで二百羽のカラスを束ねるリーダー。貝殻のコレクションが趣味。
【サッキー】シートン幼少の頃家にいた牛。子供の尻を角で突くのが趣味。
【サム】黒人のドアマン。
シートン】アーネスト・トンプソン・シートン。有名な動物学者にして、あの「シートン動物記」の著者。「わたし」がインタビューした現在、80歳くらいの老人で、サンタ・フェ近くに「シートン王国」を作り上げ暮らしている。1946年10月23日死去。
【J・マリー】ロイヤル・アナロスタンをアダムス夫人に売った謎の人物。
【シエラネバダ山脈】ナチュラリストの聖地と言えるかもしれない。山道具のひとつにシエラカップという食器があるけど、たぶんここから来ているのではないでしょうか。
【ジョン】ルーズベルトの秘書官のひとり。小柄で気さくな明るい青年。
セレスティーヌ】キャメロン夫人の小間使い。
【タビー】「わたし」が飼っている猫。
【トニイ・ヴァイン】マイク・クレイトンの友人。
ナマズのジョー】シートン十歳の頃知り合った年齢不詳でどこから来たのかもわからない謎の男。いつもにこにこしている。
【猫の名前】見たまま安直につけられることが多かったらしい。
【ネッド】フィッツランドルフ氏の牧場で働いている青年。狼の遠吠えコンテストで優勝した。
バージニア】パリに絵画の勉強に来ていたアメリカ人の若い女性。ルイス・フィッツランドルフ氏の娘。絵の才能はたいしたことはないが批評眼にすぐれている。
【旗尾/バナー・テール】ハイイロリス。ローン一家の飼い猫に育てられた。
【ビル】ルーズベルトの秘書官のひとり。がっちり型だが最近少々肥満に悩んでいる。
【フィッツランドルフバージニアの父。事業家で、自分の牧場からロボを追い払う仕事をシートンに依頼した。
【フレッド】シートンの兄。
【ボブ爺さん】ロボと対決した猟師。ロボに殺された?
【ボブ・ワーナー】配管工で、キャメロン夫人のダイヤを盗んだ疑いで逮捕された。
【マイク】ルーズベルトの秘書官のひとり。やせ型で少し神経質。
【マイク・クレイトン】典型的な金持ち息子。東部では誰知らぬ者のないクレイトン家の跡取り息子。シエラネバダ山脈でシートンと出会った。
【ライト】シートン幼少時の隣家。仲が良かったがある出来事を境に険悪な関係となる。
ルーズベルトセオドア・ルーズベルト。第26代アメリカ大統領。シートン氏の友人。二人ともスミソニアン博物館によく動物標本を寄贈する。《成功する政治家は、誰もがいつも考えていることを、誰よりも大きな声でしゃべる》がモットーだったとか。
【ロイヤル・アナロスタン】古代エジプトのファラオの時代にまでさかのぼれる血統書(信じるなよ!)がついている高貴な猫。アダムス夫人の愛猫。
【ローン一家】ニュージャージー州、タッパン近くにシートンが居を構えていた頃知り合った一家。父はビル、母はメアリ。一人息子のトムは旗尾を拾ってきて見世物にして金を取っている。
【ロビン】ライト家の息子。フレッドと同じ年。
【ロボ】「狼王ロボ」もしくは「カランポーの悪魔」と呼ばれる狼。子牛ほどもある巨体と、人間を翻弄する頭の良さで恐れられている。
【わたし】ロサンゼルス・タイムスの記者。シートン氏の本に書評を書くため著者インタビューにやってきた。