よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

『海からの贈物』リンドバーグ夫人・著/吉田健一・訳…新潮文庫(400円)117頁1967年07月20日発行・了2004年06月29日{△↑}【エッセイ】

海からの贈物 (新潮文庫)

相性が悪いのでしょうか、読んでいても、どうもアタマに意味が入ってきません。いつのまにか何度も同じところを読んでいるのです。
作品のモチーフが海なだけに、まるでゆったりと寄せてはかえす波のように言葉を繰り返しているうち、なんだか呪文っぽくなってきて、しだいに眠たくなって、ますます意味がわからなくなってきて…
zzz...ハッ!!
うーん、逆に、相性がいいのかもしれませんね。

貝は単に、海が引いてはまた戻って来るのを永遠に繰り返しているのだということを私に思い出させるためだけのものなのである。(p.98)

それにしても、うつくしい表現の多い本ではあります。一冊持っておくと宝石を持っているような気分にはなれるでしょう。

所有欲は美しいものを本当に理解することと両立しないのである。(p.101)

少しのほうがもっと美しく見える。(p.102)

回りに空間があって初めて美しいものは生きるからである。(p.102)

この島では、私は友達と黙って一日の最後の薄い緑色をした光が水平線に残っているのや、白い小さな貝殻の渦巻や、星で一杯の夜空に流星が残す黒ずんだ跡を眺めていられる。(p.103)

そのように落胆したり、当てが外れたりすることはあっても、私たちを本当に豊かにしてくれるのは凡てそういう、未知のものなのである。(p.106)

しかし、こういうことを書いている人でも、都会では思うように生活できないわけなのですねえ。場によって生活を構成するものを、うまく島が選んでくれると。都会では、都会が選んでしまって、その量が多すぎてオーバーフロー状態になってしまう、と。
それに対抗するためにどうすればいいか。

※)以下は、人生に対する感覚を鈍らせないための方法。
1)なるべく質素に暮らしましょう。
2)体と、知性と、精神の生活の間に平衡を保ちましょう。
3)無理をせずに仕事しましょう。
4)意味と美しさに必要な空間を設けましょう。時間と空間に隙間をってことでしょうか?
5)一人ないしは二人でいるための時間を取っておきましょう。
6)なるべく自然に接近しましょう。

(ヨーロッパは戦争で苦しんで)
「ここ」と「今」を黄金の現在に変る機会を与えられたのである。今日、ヨーロッパ人はただ日曜日に田舎に散歩に出掛けるとか、町の喫茶店で一杯のコーヒーを飲むとかいう簡単なことでも、それで現在を楽しんでいる。(p.114)