よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「ダークホルムの闇の君」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

いつものダイアナさんの作品のごとく、最初は「混沌」。読者は、いきなり「混沌」の中に放り込まれて、なにがなんやらさっぱりわからないまま翻弄されます。

そして混沌はその度合いをどんどん高めていく。

いつかは収斂して心地よい大団円へと向かうのだろうと期待しているわけですけど、果たして本当にまとまってくれるのでしょうか、と心配になるのもいつものこと。
誰も彼もが不機嫌で、それもダイアナさんらしくはあります。

魔法使いたちの国は異世界の(おそらくぼくたちの世界の)ある観光業者に支配されていた。
毎年やってくる「巡礼団」という名の団体旅行者に国を荒らされ大迷惑。
観光業者はなぜか強力な魔物のバックアップを得ているらしく逆らうことができない。
それを打開しようとするお告げにより今年の「闇の君」(魔王?)に選ばれた魔術師ダークは役をこなすために四苦八苦。
なぜ彼が選ばれたのでしょう?あまりにも向いていないので、しっちゃかめっちゃかになるから?

(2006年12月30日読了)


巡礼団団へのサービスはマニュアル通り行われていくが、何かがおかしい。何か手違いが起きている。
そんな中ブレイドが先導魔術師として同行する巡礼団の旅が始まった。
やがて…ついにすべてが破綻するときがくる。

このあともう一冊読むつもりなので、今年最後の読書ではないと思いますが…。

(2006年12月31日読了)


闇の君についての簡単なリストを下に置きます。


【青い魔物】ダークが魔物を呼び出そうとするとこれが出てくる。既知のどの魔物とも異なるので呼び出した後が厄介。
【アンシャー神】ウムルーが信仰している神。
【ウィルキー】ケリーダのとこにいる雑役夫。動揺すると変身してしまう狼男。
【ウェンデラ】馬姫。エルフと思えるほど背が高い。≪香辛料をほどこした干し肉なみに硬くて筋張っていて辛口だった≫p.45
【馬姫】→ウェンデラ
【ウムルー】アンシャー神の司祭長。とっても金持ち。でも、案外信仰心は厚い。ウムルー司祭領はルーサー王の国の隣にある。
【ウロコ】歳取ったドラゴン。めちゃくちゃ大きい。じつはかなりエラい龍。
【叡智】≪生ける者に叡智を標榜する権利はない。新たに発見すべきことが常にある≫byウロコ
【エルダ】グリフィンたちの末っ子。ダークの娘と言える。猫の細胞も入っているので、他のグリフィンより小さい(小さくなる予定)。
エルドレッド・レドベリー】なにやら教授らしい。ぼんやりしているところがあるらしい。すざまじい妹とともに参加。
【エルフ】とても高貴で美しい生命体なので彼らと逢った後は自分がみじめに思えてしまう。他者に迎合したりしない誇り高き一族なのだが、チェズニーに何か弱みを握られており言うことを聞くしかないらしい。
【鵞鳥】ダークん家の鵞鳥は魔法使いでもあるらしい。南に飛んでいきたがる傾向がある。
ガラドリエルドワーフの男。
【カレット】グリフィン。ダークの娘と言える。ブレイドとはほぼ同時期に産まれた双子のような存在。ものづくりが得意。短距離を高速で飛ぶのに向いている。≪それにねえ、くたくたなんだ。機嫌悪い。性格も悪い。わたしに逆らうんじゃない≫。ケリーダさんのお気に入り。容貌には自信がなかったのだが、あるときを機会に、自分の美しさに目覚めはじめる。
【キット】黒いグリフィン。ダークの息子と言える。ちょっと大きくなりすぎた。グリフィンたちのリーダー格。最近ちょっと凶暴な気分。
【キレイ】ビジンの子供。ほぼペガサス。
【グウィシン】エルフ。タリサンの腹心。エルフ学の教科書に載っている有名人。
【グレタ】フランの従妹。魔女役となったマーラの身繕いを世話している。
【黒い本】巡礼団へのサービスのマニュアル。
【ケリーダ】女性の魔術師。大学総長。ダークとはあまり折り合いがよろしくない。
コンラッド】詩人。なぜか野営地の厨房予定地に陣取っていた。
【ジェフリィ】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団メンバーの一人。スーキィの兄だが感じのいい青年。生まれながらの指導者で、ほとんどの人間を意のままにすることができる。でも「捨て石」の設定となっている。
【詩人学舎】詩人になるために学ぶ学校。ショーナが行ってる。「巡礼団」に関することには関知しないことにしている。
首長国】すばらしく乾燥している。
【巡礼団】チェズニーが企画した観光旅行にやってくる団体客。悪の魔王(闇の君)を倒すという仮想体験(当人たちは真実だと思っている)を味わえる。国を荒らし(悪という設定の)人々を殺すのでダークホルムの悩みの種。勝手に家の中に入ってきてタンスの中を探ったりするのかも?
【ジョージ爺さん】村人。恰幅のいい健康的な爺さんだが魔法で貧しく骨と皮だけのあわれな年寄りに見せかけられている。
【ショーナ】ダークの娘。詩人見習い。マーラに似て美人。≪どうしよう!もう詩人になれない、音楽がなかったら生きていけない!≫下巻p.55
【スーキィ】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団メンバーの女の子。ジェフリィの妹。惚れっぽいのかもしれない。スーキィとレヴィルを並べて読むとときどき「スキーヴ」に見えてしまう(まったく関係ないが、さるお話の主人公をしてる大魔法使い)。
【捨て石】どの「巡礼団」の中にも「捨て石」と称され、物語に真実味を付け加えるため本当に殺されるメンバーが存在する。だいたいは自分の世界で死刑になるような犯罪者らしいが…。
【ダーク】魔術師。細胞を掛け合わせて新しい生物を生み出すのが趣味。変わり者と思われているらしいが、知人たちからのウケは案外にいい。今年の「闇の君」に選ばれて右往左往。瞬間移動はちと苦手。
【タイタス】南の皇帝。ゴーメンガースト城には住んでいない?
【ダモリン】エルフ。タリサンの配下。エルフ学の教科書に載っている有名人。
【タリサン】エルフの王子。500歳でマリシーンっていう奥さんもいる。今年の黒エルフの長の役をあてがわれた。エルフ学の教科書に載っている有名人。
【チェズニー】ローランド・チェズニー。観光業者。魔物のバックアップを得て、ダークホルムをほぼ支配している。
【チェル】いい国。葡萄の(そして葡萄酒の)名産地。今年の「巡礼団」によって滅ぼされることになっている。
【デウカリオン】お告げによると、ブレイドが魔法を習うことになっている誰か。当然ながら、実は物語中に主要キャラとして違う名前でちゃんと顔を出している。
【トリポス】魔物。
ドワーフ】妖精の一種。背が低くて地下に暮らし、工芸品作りが得意で、怪力で、戦闘力もあるという一般的なドワーフ像をこの話でも踏襲しているもよう。チェズニー氏に工芸品を貢いでいるらしい。食事に好き嫌いはほとんどないが、コーヒーだけは嫌い。
【ドン】グリフィン。ダークの息子と言える。
【何があったか一目瞭然!】プール婆さんが落馬するたびに発する言葉。
【肉食羊】ダークの失敗作(byショーナ)。食肉用の羊ではなく、肉食の羊。
バルナバス】魔術師。大学副総長。ダークにわりと好意的ではある。
【ビジン】ダークの馬。翼があって空を飛べるし、文語体でしゃべる。
【ファンドレル】エルフ。タリサンの配下。エルフ学の教科書に載っている有名人。
【プール夫妻】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団メンバー。爺さん婆さんと呼ばれたがっている。
【フィン】若い魔術師。
【フラン】村人。
ブレイド】ダークの息子。魔術師学校に入ってまっとうな勉強をしたがっているがダークに反対されて、ちょっと反抗的な気分。瞬間移動とふるえの魔法(酷寒の魔法?)が得意。
ブレイドの巡礼団】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団。馬姫によると申請よりも二人多い。最初に旅を共にする商人によると「どう見ても間抜けの集まりだ」ブレイドも同感だった。
【ベトゥラ】女の魔法使い。マーラの友人。魔法そのものの性質を研究している。
【ベレディン】エルフ。タリサンの配下。エルフ学の教科書に載っている有名人。
【マーラ】ダークの妻。魔術師。何かよくわからないけど「小宇宙」を作り出すのが趣味みたい。魔女役をさせられることになったが、なんだか楽しそう。ダークは今度のことでマーラとの間が決定的に悪くなるような予感を感じている。
【マキゲ】ダークのとこにいる羽つき豚の中では一番図太い性格。
【闇の君】巡礼団と対決する(ということになっている)ダークホルムの魔王。実際は回り持ちで魔法使いたちがそのフリをしているだけ。
【リダ】グリフィン。ダークの娘と言える。料理がうまい。ぽっちゃりしているが実は長距離飛行向き。
【龍】最強の生物。知性もあり魔法も使える。現代の龍は何かの理由を聞くと、遠くを見つめ計り知れない叡智をよそおうフシがある。
龍王】龍の中の王。
【ルーサー王】北方の王。
【レヴィル・タウンゼント】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団メンバー。金髪で金持ちらしく洗練されている感じのいい青年。唯一こちらの世界の服を違和感なしに着こなせている。ブレイドはどこかで記憶しているような気がした(こういう話の常で、気のせいということはないであろう)。早々に正体は判明する。なかなか魅力的っぽいキャラだったのにもう登場しないのかと思った。
【レギン】盗賊の代表。
【レドベリー女史】ブレイドが先導魔術師としてつくことになった巡礼団メンバー。弟のエルドレッド・レドベリーとともに参加。自分を女史と呼べと命じた。また、自分たちは衣服の違いなど超越しており自分たちの服を着続けると言い張った。メモ魔。
【ロリエル】エルフ。タリサンの配下。エルフ学の教科書に載っている有名人。