よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「陰陽師」夢枕獏

陰陽師夢枕獏…文春文庫(1991年)
夢枕さんのこのシリーズはほとんど全部読んでいると思うのですがなぜかこの最初の巻だけは読んでませんでした。ようやく手にしてさっそく読みました。

「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。

きらくに物見遊山っぽく謎を解きにいく晴明さんと博雅さんのかけあいが楽しい。ときにおどろおどろしい描写もあるけれどゆったり読書できるのがいいのです。とくに博雅さんのキャラクタがうれしい。岡野玲子さんが漫画にしてるわけで、それもとてもいいのですけど、原作の方はどちらかと言えば坂田靖子さんあたりが漫画にしてくれたら似合いそうな雰囲気ですね。
はてな年間100冊読書クラブ

オンライン書店ビーケーワン:陰陽師

陰陽師に関する簡単なリストを下に置きます。


安倍晴明】日本史上最高の魔法使いです。実在したそうです。残ってる絵などを見るとなんだか冴えないおっさんですが、このお話のようにさっそうとしている美形と考えておく方が楽しいでしょう。天皇にも遠慮せず、孤高で博雅以外の人間には打ち解けず、山野の一角をそのまま切り取ってきたようなぼうぼうとした庭を愛でながら暮らしています。
【綾子】賀茂忠輔の娘。
【綾女】晴明が使う式神。晴明んちによく似た女の描かれた絵があります。
【犬麻呂】赤髪の犬麻呂と呼ばれる五十くらいのもと僧侶だった盗賊で皆殺しにしてからゆっくり金品を物色する残虐なタイプです。
【応天門】どこも悪いところがないのになぜか雨漏りがするそうです。
【梶原資之(かじわらのすけゆき)】図書寮の役人だったが坊主になり般若経の写経を一日十回千日続けることにしたが色っぽいあやかしに悩まされています。僧名は寿水。
【賀茂忠輔】腕のいい鵜匠で一度に二十羽の鵜を使うことができるそうです。千手の忠輔と呼ばれることもあるとか。博雅の母方の遠縁。
【漢多太】インド-中国-日本と渡った楽師。琵琶の名器である玄象の作者でもあります。
【黒川主】賀茂忠輔の娘、綾子のもとに通ってくる、尋常な風情ではない怪しい男です。
【玄象】琵琶の名器です。行方不明になったのですが、事件の終わった後、ふしぎな琵琶になってしまいました。
式神】晴明など陰陽師が使役する精霊のようなもののことです。
【呪(しゅ)】このお話ではなんでも呪ということになります。こだわり、ことば、名前、勘違い、脅迫観念…。
【白比丘尼】たしか、有名人ですね。死ねない女で、30年ごとに陰陽師のところにやってくるのです。
【蝉丸】盲目の老法師。百人一首でもおなじみ。博雅が三年間通ってようやく琵琶の秘曲である流泉、啄木を聴かせてもらいました。
【智徳】晴明を試しに来た坊さんです。ほんのちょっとだけかわいそうな目にあいました。
【瓶子(へいし)】このお話ではよく出てくるアイテムです。たいがいお酒が入っている器です。これをかたわらに片膝立てて杯を傾けながら庭を眺めているのが晴明のお気に入りです。
【みつむし】晴明が藤につけた名前。のちに使役する女性の姿をした式にもこの名前がついているので藤の精かもしれません。
源博雅平安時代の武士です。笛その他の楽器の名手です。実在の人物ということで、ほんとうは晴明とは時代が少しずれているようですが気にすることもないでしょう。このお話では30代の後半の年齢で、晴明の友人となります。無骨だけど愛敬のあるタイプです。まじめで、純粋で、正直で、つねに驚きをもって人生を歩んでいるいい男ですね。このお話の魅力は晴明よりも、むしろこの博雅が醸し出していると思われます。≪酒をよばれに来たのではないが、出てくる酒を拒みはせぬ≫(陰陽師P.27)
壬生忠見(みぶのただみ)】死んだ男。歌合わせで平兼盛に敗れて化けて出てしまいます。特に悪さもしないので、みんなほっておいています。
【戻橋】晴明が式神を置いているというウワサがあります。
羅生門朱雀門をさらに南へ進み京のはずれまで来ると荒れ果てた羅生門があります。いろいろ不思議なことが起こる観光スポットになっています。当時日本最大の門でもあったそうです。