よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

京極夏彦『巷説百物語』シリーズ

前の巻は出てすぐ読んだけど今回のはだいぶんあいた。
その間に強烈な絵柄のアニメを見てしまったのですでにその印象から逃れられなくなってしまってます。

妖怪じみた事件も実は人が起こしたものであり、もつれた糸を結局妖怪のせいにして解きほぐす仕掛け人たち。

京極夏彦さんの代表作は百鬼夜行シリーズなのでしょうけど、それよりも好き。じんわり読める。
でももう彼らに会えないのだろうなあ。

(2005年08月15日読了)

いえいえ、また会えました。かろうじて。

年末からぽつりぽつり、ゆるゆると愉しんできた一冊をようやく読み終えました。(これは2006年01月04日に書いたものです。)

京極夏彦さんの中でも最もデキのいいシリーズかもしれません。
残念ながら最終巻のようです。

あの山岡百介さんが一白翁という老爺となり若者たちに怪異を語る。

テイストとしてはアシモフの「黒後家蜘蛛の会」と岡本綺堂の「半七捕物帖」を足したような感じ。
頭の悪い連中が怪事件にあれやこれやのたもうたあげく一白翁に助けを求め昔がたりを聞く。
年の功で若い頃よりシャープになった百介さん大活躍。

いい時間をもらいました。

最後の百物語の回で一白翁の語った怪異の一覧がそのままこのシリーズの作品リストでしょうか。
どんな話だったかかなり忘れてますが『竹原春泉・絵本百物語』の該当すると思われる見出し語から並べます。

* 小豆洗い
* 野鉄砲
* 白蔵主
* 狐者異
* 舞首
* 飛縁魔
* 芝右衛門狸
* 船幽霊
* 塩の長司
* 七人みさき
* 柳女
* 赤ゑいの魚
* 帷子辻
* 天火
* 山男
* 手負蛇
* 老人火
* 五位鷺
* 風の神(百物語の回)

(2006年01月04日)

はてな年間100冊読書クラブ

下に「巷説百物語」の簡単なリストを置いときます。


【生駒屋】江戸で五指に入る蝋燭問屋。その離れに百介は暮らしている。なぜなら彼はここの養子だから。商才がないので店の仕事はせずぶらぶらしている。
【一白翁:いっぱくおう】別名薬研堀のご隠居。じつは80歳を越えた山岡百介の姿。「後巷説百物語」では半七親分のように過去を語る翁として登場する。
【戎島:えびすじま】男鹿半島の沖二里の近海にある小さな島でふだんはなぜかいつも霧でおおわれていてまったく見えず地元でも知っている者は少ない。また断崖絶壁に囲まれていてとりつくシマもない。なのに人は住んでいる様子がある。
【おぎん】山猫廻しのおぎん。義太夫節を語りながら人形をあやつる妖しい美女。又市たちの仲間。
【考物】百介の当座の仕事で、子ども相手のなぞなぞみたいの。
【祇衛門】稲荷坂の祇衛門と呼ばれた悪党。世の枠組みからはずれた者たちを使役して悪事をなしていた。殺しても生き返る男というウワサ。
【倉田正馬】遊民。元は徳川の重鎮の息子。洋行帰り。
【気配】《気配と申しますのは、目や耳や鼻や肌や、そうした下界に接する色色な部分が感じ取ったモノを、押並べて、合わせ比べて──頭で考える訳ではないのですけれどもね、総合的に判断されるものなのですね》(天火)
【このシリーズは】妖怪がらみに見えるがれっきとしたミステリ。と同時に必殺シリーズみたいな。
【笹村与次郎】加納商事という貿易会社の社員。江戸時代は北林藩の江戸詰め藩士。百介に共感を抱いている。
【小夜】一白翁の世話をしている娘。翁のところに出入りしている青年たちのアイドル的存在。妙にもののわかっているようなところがあり、何者?
【渋谷惣兵衛】北林藩出身。山岡鉄舟に剣のてほどきを受けた。現在は町道場の主だが明治というご時勢がら流行らない。顔や経歴に似合わぬ合理主義者。
【正義】《正義を支えるのは権力ではなく、矢張り人情であって欲しいものですなあ》(「手負蛇」)
【祟り】《祟りとは、発する方の意志が及ぼすものではなく、受ける方の心持ちが発生せしめるものなのですよ》(「手負蛇」)
【百物語】《虚構(うそ)と現実(まこと)の真ん中辺りに、どっちつかずの場を作る。/そうした呪術(まじない)が百物語です。》(風の神)
【ふらり火】天火とも言い書中の作品名にはそちらが使われているが一般には「ふらり火」の方が馴染みか。人魂も含むふらふら飛んでる炎のこと。
【又市】札撒き御行の又市。小股潜りの異名。油断のならないヤツ。裁けぬ悪を裁く仕事人?そのかかわるのは妖怪じみた犯罪ばかり。
【矢作剣之進】東京警視庁の一等巡査。旧幕時代には南町奉行所の見習同心。威厳のために髭をはやしているがメチャクチャ似合わない。伝説のたぐいが好き。一白翁の知恵を借り事件を解決しているうちに、いつしか「不思議巡査」の異名を持つ妖しい事件専門の名物巡査になってしまう。
【山】《山という処は見えないモノの方が多いのです》(天火)
【山岡百介】主人公というか狂言回し。怪談・綺譚に魅入られていて諸国を歩いて収集し百物語の形にして出版するのが目標で当面は考物を作ってわずかな稼ぎをしている売れない貧乏物書き。ではない。売れないのは本当だが大きな蝋燭問屋の若隠居。