よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「人形の旅立ち」長谷川摂子/金井田英津子・画

これはよいです。

昭和30年代あたりでしょうか。
山陰の小さな町に暮らすおかっぱの女の子、なおが出会う不思議なことごと。

神社の大木の下に打ち捨てられる人形たちの行方。
小さな畑に現れる少女の幽霊。
病弱の妹が便所の向こうに見た風景。
狐のようなお婆さんがハンモックで揺すっていた赤ん坊は。
旅の三味線弾きの女の正体は。

これらは怪奇幻想譚なのですが、こわいというものではありません。
なぜかなつかしいのです。
日本人が共有できるなつかしさなのでしょうか。
それとも、かつて子どもだった人が共有できるなつかしさなのでしょうか。

小学高学年以上向けとなっていますが、しんみり怖いこのお話たちは大人のものにもしましょう。

(2004年08月15日読了)