よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

『本朝聊斎志異』小林恭二…集英社(2500円)381頁-2004年01月30日発行-2004年06月13日読了

本朝 聊斎志異

《なぜ助けねばならん。君たちから見れば生死の隔たりは大きいのだろうが、僕から見れば、それは紙の裏表にすぎない。生がとりたてて楽しいわけでもなければ、死が耐え難く悲しいわけでもない。》(p.41)

日本のさまざまな時代を舞台に、あやしくも色っぽいお話がたくさん。
本家聊斎志異にかなり近い雰囲気の作品集。さすがに現代の小説だけにあそこまであっさりはしていないが。

《「親が肉体の頸木を逃れ、魂となって自由に世界を巡遊しようというとき、なぜ悲しまねばならないのでしょう」》(p.139)

《庭にはただ老松が生えているのみであったが、どの松も不思議な象(かたち)をしており、見飽きることはなかった。》(p.148)

このお話みたいなもんやね。

《病人がいればこちらから頼んででも治療するのが医者というものだ。》(p.177)

まっさか、冗談でしょ?

関西の話が生き生きしてるなあ。この作家、関西人なのかなあ。

《「風よ、心あればこの酒を若狭にまで運んでおくれ。六郎、またいずれ一緒にやろうじゃないか」》(p.319)

異類とも平気で仲良くやれる人物たち。ぼくもそうありたいもんです。

《おまえは石を食ったことがないから、そのうまさがわからんのだ》(p.320)

評価「○」。