よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

ほどペンの世紀

ほどペンの世紀

うわのそら書房編集部・編 A4判 350頁 2800円



ほどペンの世紀ものには「ほどほど」というものがあります。

身に合った以上のものを持っていてもあまり意味がないとは言えるでしょう。

ほどほどのもので充分。そうではあるのでしょう。

ほどほどのものの方が気持ちいい。それもあるでしょう。



1万円前後までは、万年筆として比較的安価な価格帯でしょう。

ほどほどのペン、略して「ほどペン」。あまり意味はありませんが。

世の中のほとんどの方はこの「ほどペン」で充分なはず。

これは、そんな「ほどペン」たちの使い心地、気持のよさを検証してみた一冊です。



検証にあたっては、同じ条件とできるよう、たとい安い種類とはいえどなんとかインクコンバーターを装着できるもののみを選びました。

インクも数種類のボトルインクについて検証しています。インクによって気持のよさが変わるということはあり得ますから。

ペン先の太さに種類がある場合もそれぞれについて検証しました。

紙も一般的なノート、コピー用紙、和紙、パピルスなど各種取り揃えてみました。



そして、試験者として、書く文字そのものが情報のプロテクトになるという恐るべき悪筆の持ち主として有名な、作家の春原遊(はるはら・あそぶ)先生にお願いしました。

「そりゃぁ、あたしだってモンブランの万年筆とか使いたいわよ(タメ息)。でも、あたしの字なんかだったら万年筆がかわいそうってもんでしょ?」

お愛想でも「そんなことありませんよ」と言えないところが苦しかったのです。

「良くて『ほどペン』?ってところよね」

「ほどペン」でももったいないかもしれませんね。



氏にはひたすら「永」の字を書き続けていただき、見本として添えていただきました。

ちなみに「永」の字には文字のすべての要素が入っていると言われております。

労作です。



すべて終わった後、春原先生は慨嘆したものです。「あたし決めたワ。この世から『永』という文字を抹殺することにしました」

むろん、いまだ抹殺されておりません。



※ このサイトはフィクションです。この書籍も(たぶん)この世に存在しないものです。ご了承ください。