よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

本は旅をする

ブッククロッシングの話ではありません。
ありませんが、似たようなものかもしれません。

本というのは旅をするものだと思うのです。
旅をしたがっているのだと思うのです。
なるべく多くの旅を。
旅とはいまここでない場所に行くこと。
本にとって人に読まれることが旅か。

なるべく早く旅立たせてあげたいとも思うのです。
今ボクの手元にあるのは仮の宿り。
ボクが死んだら、あるいは気まぐれで、あるいはお金に困って。
いつかは旅立ち他の人の手に渡る。
古本屋を宿としながら。
図書館の本なら小さな旅を繰り返しているということでしょうか。

そんな旅をつづけるうち擦り切れていく。

消滅するまで旅をつづける。
うっかり焼却場に直行してしまうこともあるかもしれません。
みずからの移動手段を持たない本は捨てられ落っことされ場末の雨に壊れてしまうかもしれません。
そんな旅の終わりまで。