よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

薬剤耐性菌のこと

共同通信京都新聞2010.09.12朝刊。

多剤耐性菌のことが大きな話題になっていますが、耐性菌に対する新規抗菌薬の候補がひとつも残っていないことを専門家が報告していたそうです。
報告者の藤本修平東海大教授によると「危機的状況」だということです。
こういうのもそろそろ限界が来かけているのかもしれませんね。
こんな事態は医療というより人類という存在のありように起因するものかもしれません。

タフで強い菌へと作ったのはもちろん人間です。
ライオンが我が子を千尋の谷に突き落とすように鍛え上げたということになるのでしょう。
それは、ひとつずつ可能性を削除していってるような空しい作業だったのかもしれません。

あるいは菌を殺そうとする医療のありよう自体が間違っていたのかもしれません。
そこには「元から絶たなきゃダメ」という発想があったのでしょう。
即効性も必要なわけだし。
においも、菌も、イヤなものはすべて「絶つ」という方針になってしまいがちなのが人類。
受け入れられないものは許さない、という発想になることが多いように思います。

「許さない」というのは戦争を起こす心と同じもの。
結局人間は戦争することを宿命づけられている種族なのかもしれません。
かなしいことに。

しかし「許し」の中にも道はあるはず。
すでに遅いかもしれないけど、菌と共存するような医療の方法(あるいは世界のありよう)があったのかもしれません。
たとえばその菌によっても死なない体になること。実際、人類は多くの菌と共存しているわけだし。
もちろん、こんな方法は時間がかかり、ある個人を救うための役にはあまり立たないだろうから、医療としてはそんな悠長なことは言ってられなかったのでしょうけど。