よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

離岸流にご注意

IMG_2852.jpgずっと以前のことです。
夜中の、海水浴場ではない海岸で泳いだことがあります。
夜の海は恐怖をかきたててくれました。
なにがひそんでいるかわからない。
恐ろしさをたのしんでいました。

そんなときです。
急に沖の方に流されはじめました。
「離岸流」なのかどうかはわかりません。
その頃はそんな言葉も聞いたことがなかったですし。

経験的に海にも流れがあることには気づいていたので、そして逆らっても無駄だということも知っていたので(ボートでも苦しい)、流れに身をゆだね考えはじめました。

海で10キロほど泳いだときでもまだまだ余裕だったので、焦りはしなかったのですが、だんだん海岸の灯りが見えにくくなっていったので、なるべく早いうちに逃れなければとは思いました。

危機的状況になればなるほど醒めて冷静になるタイプなので、そのときもけっこうクールに考えました。

あんまり沖まで連れていかれたら灯りが見えなくなって戻られへんなるし、沖の流れにつかまっても厄介やから、早う逃げだしたほうがええのは、たしかや。
どうしたら流れから出られる?

これは海岸ではねかえってきた流れなんやろなあ。
てことは海岸より狭い可能性が高い。
離れるほど広がるやろうけどだんだんゆるやかにはなるはずや。

海岸と平行に泳いだら流れのないとこはすぐありそうやな。
そこまでいってから岸にむかって流れにまたつかまらんように行ったらなんとかなるやろ。

かすかに見える灯りを頼りに実行してみたらうまくいったのでした。

そのときはパニックに陥らなかったのが結果的によかったのでしょうが、生物がパニックに陥るのはそれなりに理由があるかもしれません。

単純には情報処理ができなくなってやみくもに動いてしまうということですが、理屈抜きでとにかく行動することのメリットがおそらくはある。

まず、行動に移る速度が速い。とにかく速度が求められることも多いでしょう。

また、個体にとっては生きるか死ぬかは運しだいとなりますが、集団にとっては各個体がランダムに動くこととなり全滅は回避しやすくなる。

パニックに陥るというのも、もしかしたら遺伝子に組み込まれている、リスク対策プログラムなのかも。