よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

レコードをかける

めんどくさいのが良かったのかもしれませんね。

積み重ねているコンポにひとつずつスイッチを入れます。

機械ごとにある、針が振れるタイプのインジケーターに明かりが灯ります。じつのところあんまり意味はわかってないのですが。
スイッチを入れる順番もあったような記憶があります。アンプからだったような?逆だったかな?

聞こえるかどうかくらいのブーンという雑音が発生しているような気もします。
ちょっと気分が盛り上がります。

落としてしまわないよう手のひらで抑えながらジャケットから滑らせるようにしてレコードを出します。
穴の見えるところまで出てきたらそこに中指をあてがいます。親指はレコードの外周を保持します。
レコードを水平にし、ジャケットから完全に抜き出してしまいます。
盤面には触れないよう注意しながら。
ジャケットは、聴く場所からそれが見えるようなところに立てかけておきます。

盤を見て汚れているようだったら軽くクリーニング用のスプレーをかけます。
スポンジをビロードで包んだような専用のブラシで溝に沿って円を描くように拭きます。
スプレーをかける必要がないときでも、埃を取るために必ず拭きます。

プレイヤーの蓋を開けます。
レコードの外周を両手で持ち直しターンテーブルに慎重に置きます。
なるべくなら穴の周辺にこすったような痕を残したくないので一発でターンテーブル中央の突起に通します。
アームを持ち上げ、盤面最外周部の音が入っていない部分に針をブチッという衝撃音がしないよう軽く慎重に落とします。
プレイヤーの蓋を閉じます。

音楽が始まる前にしかるべき位置(いいポジションに椅子などを置いている)に行き、腰掛けて待ちます。
音楽が始まります。

と、レコードの頃には聴きはじめるまでには、そんな一連の作業がありました。
めんどくさくはありました。
しかし、そういうのが良かったのだろうとも思います。

現在のCDやiPodなどの音楽プレイヤーはたしかに使い勝手がいいと思うのですが、「聴く」という行為がとても軽くなったような気がします。
思えば、一連の手間が一種の儀式となり「これから音楽を聴くんだ」という気分を盛り上げてくれていたのかもしれません。
心に残っている曲はほとんどレコードで聴いていた頃のものです。
聴いた時間数ではすでにCD等で聴いた時間の方が長いかもしれませんが。
もちろん、CDが出る前に多感な時期を過ごしたということもあるのでしょう。
そして、今や音楽はほとんどヘッドフォンで聴くのですが、当時はほとんど生の耳で聴いていたということもあるかもしれません。
空気中を越えて入ってくる音はまた少し異なるものになっているのかもしれませんね。

CDはともかく、音楽プレイヤーで聞いた場合、本当に聴き流しているだけでほとんど何も残ってくれない感じがあります。
百枚以上のデータが入っているのですが、それゆえに今どのレコード(CD)がかかっているのかすらわからなくなります。
「一枚」に対する、「一曲」に対する思い入れがほとんど発生しないです。
いわば、音楽という「機能」だけを味わっているのでしょう。
だから最近ではプレイヤーに入れている曲もなるべくCDで聴くようにしています。

このブログを書きながらかけているCDはアイク・ケベックボサ・ノヴァ・ソウル・サンバ」。
テナーサックスのやさしくムーディーな一枚ですね。
好きというほどではないですが、ときおり聴きます。
なんとなく日本の古い歌謡曲かポップス演歌の世界のような気がします。
妙になつかしい、のかも。
ケベックはこの録音のすぐ後に亡くなったそうです。

ボサ・ノヴァ・ソウル・サンバ
ボサ・ノヴァ・ソウル・サンバアイク・ケベック ウィリー・ボボ ウェンデル・マーシャル

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