よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

支倉凍砂『狼と香辛料』

13巻まで読了。

経済と商売に関心を抱けるようになるかもしれないファンタジー
剣と魔法はほとんど登場せず、武器は知恵と金。
複雑なときはかなり複雑になる物語。

XIII(2009年) Side Colors III (2010年03月26日読了)

読み終わりました。
今回は外伝。短編集。
メインはずっと以前の章で活躍してくれた羊飼いの娘ノーラの後日譚。
相棒のわんこ、エネクの視点で描かれています。
まるで「キノの旅」の陸くんのようです。
さて、ロレンスたちとの作戦でちょっと稼げたノーラさんは夢であった仕立屋になるため、かつて疫病で人口の半分を失ったという町にやってきたのです。
そこで嬉しかったり、失望したり、また嬉しかったり。これまでになかった体験をするのでした。
そしてとんでもないことが待っているのでした。
もしロレンスと再会することがあったらきっととても驚かれてしまうことでしょう。

他の短編でもホロさま視点の作品があり、今回はいつもと異なる語り口の作品集でした。

これまでの作品を読んでいたら楽しめます。というか、そうでないと楽しさ半減でしょう。外伝とはそういうものでしょうが。


I(2006年)
25歳の行商人ロレンスはひとりの娘と出会う。彼女は自分を狼の化身、賢狼ホロだと呼び、北の国まで連れていけと言う。
ふたりのスリリングな旅が始まった。
商人の経済(?)やかけひきが愉しい。

II(2006年)
このお話はこの手のとしては読むのに時間がかかります。意外なほどていねいに描かれているからでしょう。
また会話中心ではなく地の文が多いということもあるでしょう。
だからテンポもゆったりしています。
ライトノベルの仲間に入れるには、ちょっとレベルが高いかもしれません。

いいセリフ集

この作品にはときおりちょっと印象的なセリフが出てきますね。それを集めてみましょう。

  • わっちはホロ。賢狼ホロじゃ(1巻p.52)
  • わっちはぬしと旅がしたい。ダメかや?(1巻p.67)
  • そんなやけどはわっちの証。この尻尾と耳と同じ。二つとないわっちの証と思うまでよ(1巻p.76)
  • 「おまえ自身は変わったのか?」/「……」/ホロは無言で首を振る。こんな仕草はとても子供っぽい。/「なら故郷も変わっていないだろ」(1巻p.95)
  • 食欲は多くのものを失うが、禁欲が何かを生み出すということもない(1巻p.118)
  • 一人は飽いた(1巻p.202)
  • うふふ。狩りなんて久しぶりじゃが、狩られるのは初めてじゃ(1巻p.214)
  • 道の先には利益がある。(2巻p.84)
  • 噂の力は思いのほか強いからの(2巻p.90)
  • 美醜は種族によらぬ(2巻p.140)
  • 金の絆は、血の縁よりも強い(2巻p.198)
  • しゃが、まあ、ぬしがお人好しじゃからわっちゃあ暢気な旅ができているんじゃからな。すべてを望むのは贅沢というものかも知れぬ(2巻p.230)
  • 次からはわっちを怒らせてくりゃれ?(2巻p.232)
  • サーベルと商人はまっすぐじゃ役に立たない(2巻p.259)
  • 一雨来る。わっちゃあ望んでおらぬのに(2巻p.303)
  • 羊飼いにとって、羊は守るべき哀れな子供ではなく、羊飼い自身を守る盾でも武器でもある。(2巻p.308)
  • 明日もまた生きていくのであれば明日につながるものを選択しなければならない。(2巻p.357)
  • 商人というものはどんな状況であってもまず嘘からつく生き物だ(中略)ただ、嘘つき同士であっても信頼関係が大事なのだから、商人とは不思議なものだ。(2巻p.364)


IX 対立の町(下)(2008年)
再びエーブによって危険な取引に巻きこまれたロレンスは逃げようとするが…。(2009年06月28日読了)



北の地図を描いてくれそうな人物はエキゾチックな美少女フランだった。
彼女は腕のいい銀職人であり、偏屈で頑固なことでも有名だった。
そして、地図を描く代わりに彼女が要求してきた条件は、ある村の天使伝説を追うことだった。その村にはまた魔女伝説も伝わっているのだった。

いつも通り、会話と人々の駆け引きの楽しいお話。
もっとも今回は商売の話ではないので、複雑さは少ない。

引用などをこちらに。
http://bit.ly/dCMfdv
(2010年03月02日読了)


ホロさまについての簡単なリストを下に置きます。



ホロさまについての簡単なリストを下に置きます。




9巻以降の分で作成

【新しい村】人々をまとめる強力ななにかが欠けていることが多い。
【アマン】クスコフの町のローエン商業組合商館の主。
【アルス・ヴィッド】クスコフ仕立て職人組合長。暗い目をしたとげとげしい女。
【ヴィノ】タウシッグ村の男。ホロたちの世話係となった。言い伝えの類を語るのが上手い。
【エーブ】やり手で剣呑な女商人。すべてを憎んでいるようなところがある。元はウィーフィール王国の貴族で本名はフルール。準レギュラーの地位を確立したか?
【エネク】ノーラが相棒にしている犬。黒く、精悍で、牧羊犬としての能力が高い。本人(犬)には騎士としての誇りがある。ホロとは少々折り合いがわるい。まあ、犬と狼だから。
【黄金の羊】ホロと同様、伝説の羊。今は人の姿をしているかもしれない。
【オーラー】エーブに商売の手ほどきをしてけれた商人。没落前からの知己であり、エーブの夫となった男の部下でもあった。
【カテリーナ】美しい修道女。一途さゆえか「魔女」と呼ばれるようになる。
【カレカ】トリー・ロン=クスコフ・カレカ。クスコフの参事会代表。まだ若く、背伸びをしているところがある。
【キーマン】ルド・キーマン。ローエン商業組合在ケルーベ商館別館を預かる貿易商。クールでやり手そう。
【北の大遠征】毎年恒例で、北の異教徒を討伐するため軍隊が派遣されている。それが今年は中止されたことが物語の背景となっている。
【教会文字】教会で用いられる特殊な文字。ロレンスにも一部しか読めない。
【クスコフ】人口の半分が疫病で死んだ町。ロレンスから聞いてノーラはそこで仕立屋になろうと考える。
【ケルーベ】川が町を二分し北と南が対立している町。イッカクにまつわる騒動に巻き込まれた。
【コル】ホロ、ロレンスとともに旅することになった賢く素直で健気な少年。皆が弟子にしたがるが本人的には、将来は聖職者。
【ジサーズ】陸の孤島のような北の鄙びた寒村。
【商人の言葉】省略されたものがいっぱいある。
【ジョゼッペ】クスコフに向かう神父。
【スフォン王】ウィーフィール王国の王。ちと頭が堅そう。
【タウシッグ】魔女伝説のある村。
【長寿】ホロに比べて人間はとても寿命が短い。それゆえホロさまはロレンスとの「思い出づくり」にいそしんでいる。
【デバウ商会】ルウィック同盟とは違う流通網を持つ。ジーン商会はもともとこれの傘下。
【ドイッチマン】ウィーフィール王国、テイラー商会の商人。
【鶏】去勢した雄の鶏は、雌の鶏よりも旨いらしい。なんて話をしたばかりにロレンスは鶏を買わされることになる。
【ノーラ】ある町で苦労していた羊飼いの少女。「魔女」とか「精霊」と呼ばれていたほど腕がいい。狼と羊飼いは仲が悪い。仕立屋になるのが夢だが実現は難しかった。ロレンスのある作戦に乗った。ホロがいなければロレンスは惹かれていたかもしれない。旅の仲間としても頼りがいはかなりありそうだし。
ハスキンズ】ブロンデル大修道院の離れ的な場所の羊飼い。羊のことならば神よりもくわしいらしい。ノーラと出会えば尊敬されそうだ。《旅の詩人が口にすれば単なる気障な台詞でも、ハスキンズが言えば真理の一言になる。》
【パスロエ】ロレンスがホロと出会った村。ホロは長い間この村の守り神をしていた。
【ハフナー・ユーグ】羊の紋章をかかげた絵画商。太った男。ユーグ商会の主。ハスキンズと同類。
【パン職人】職人の中でもっとも誇り高いらしい。
【ハンス】エーブがフルールだった頃彼女をバカにしたような態度を取っていた商人。
【ピアスキー】ラグ・ピアスキー。ルウィック同盟に所属する旅商人。
【フラン・ヴォネリ】腕はいいが評判は悪い頑固で偏屈な銀細工師。古い伝説の地を追い求めている。じつはエキゾチックな美少女。砂漠の民らしい。有無を言わせぬ笑顔を使いこなす。エーブと対面させてみたい。
【フルール・フォン・イーターゼンテル・マリエル・ボラン】エーブの本名。没落お嬢様。
【故郷】わっちらには新しい故郷を作るなどという発想はありんせん。故郷は故郷。誰がいるかではなくどの土地かが重要なんじゃ。(byホロ)
【ブロンデル大修道院】ウィーフィール王国にある有名な修道院
【ベルトラ】エーブがまだフルールだった頃の女中。エーブより一歳下。
【ホロ】ヒロイン?故郷に戻りたくてロレンスと旅している。人の姿のときは美少女、正体は巨大な狼。麦の穂に宿る賢狼らしい。ある村では豊穣をつかさどる神としてあがめられていた。大喰らいのうわばみ。林檎が好物のようで、よく食している。
【ホロの機嫌】よく変わる。が、理由のあることが多い。賢狼だから。
ミュラー】ウルー・ミュラー。タウシッグ村の渉外係みたいな男。
【ミルトン・ポースト】エーブがフルールだった頃取引相手となった衣服を取り扱っていた商人。貴族出身で、フルールは彼に少し惹かれた。
【桃の蜂蜜漬け】ホロの「夢の食べ物」。
【ヨイツ】ホロの故郷。今ではその名を知っている者は少ない。
【ヨアン・エルドリッヒ】クスコフで高利貸をしている気障な青年。多くの者に嫌われている。
【リンギッド】カカナ・リンギッド。タウシッグ村あたりの領主。
【ルウィック同盟】大陸北部を根城にする商人の一団。30の貴族を後ろ盾にした十の大商会が統べている最強の経済同盟。月と盾の紋章旗を掲げている。ほとんど一国に等しい力を持っている。
【レイノルズ】ケルーベ「ジーン商会」の主。「狼の骨」について何か知っているらしい。ずっこい儲け方を実行していた。
【ロレンス】クラフト・ロレンス。主人公。狼娘に翻弄される幸せな毎日を送る行商人。とはいかないか。