夜の屋上はパラダイス
屋上へ。日課になっている。
今は闇だ。手すりのまぎわから街をながめる。この辺にはあまり明かりがない。さみしげな街だ。
「空からやと黒いシミに見えるんやろな」と思う。
「廃墟…やもんな」
たばこを灯す。けむりが白く流れ、闇を濁した。
「ふう」意味のないタメイキ。ま、意味のあるタメイキなんてそうそうないが。ぼくはよくタメイキをつく。
「悪うない。こんな暮らしも」
反対方向を見る。さらに暗い。森だ。このビルは、森に接している。
「せやけどなあ」
その影をつかもうとする。
「いっつも、おんなじなんやなあ」