よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

失われた地図は求めない

うわのそら書房に入るためこの街に戻った日のこと。



久し振りにやって来た街で踏み迷った。ミミズほどにも道をつかめない。

やれやれ。ここは曖昧な街だから。しかたない、いつだって迷うのさ。



棲みつくために戻ってきたのだ。棲みついても、迷うんだろうが。



「けむりビルヂング」の看板を見出したとき、ぼくがついたのはひと息だろうか、ため息だろうか。



きっとあしたには崩れてしまうビルは、どこもかしこも欠けている。ぼくみたいだ。

やっぱり、ついたのはタメイキなんだろう。