よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

仕事が早く終わった日

たまにはちょっと早めに会社を終わる。

うす闇に出る。図書館をのぞく。今夜の本を借りる。そば屋でうどんをすする。

また「廃墟」に戻る。



けむりビルは古い。オフィスだったのは、かなたの夢だ。適当に間仕切りをもうけてアパートにもしている。物好きな住人がいくらかいる。ぼくもそのひとりだが。

うちの会社も物好きだ。こっちはけっこう広いスペースを取っている。



部屋はせまい。ベッドはぎしぎしいう。横に小さな、いすとテーブルがある。旅行用のランプがある。灯しても、部屋の四隅に闇がたまっている。いすの影が伸びる。



旅行用のこんろとパーコレーターでコーヒーをいれる。たばこにランプから火をうつす。さっき借りてきた本をひもとく。絵が多いファンタジー。へんな目つきのネコが冒険する。

「似合わへん読書傾向やね」と言ったひともいた。いまはいないが。

「そんなことはないさ」とひとりごちる。

ちょっと読んで、開いたままベッドにおく。カップが空になっていた。

「うーん」と伸びをする。