よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「風神秘抄」萩原規子

源氏の一党として戦った草十郎は一種の超能力者で、鳥の王さまカラスの鳥彦王と会話できその修行につきあい、異界との扉を開くことができる舞姫糸世と出会い笛の力で世の運命を変えるが…。
特別な力を持つ笛と舞の少年少女の恋が成就するのか悲恋に終わるのかあやふやなのでハラハラさせられる。
なかなかに魅力的なキャラクタたちが使い捨てられるように登場しては次々に消えていくのは草十郎が移動している者であり鳥であり風の眷属だからだ。

★4つでもいいのだけど、コレといったところがないので、とりあえず3つ。

(2005年12月20日読了)


「風神秘抄」に関する簡単なリストを下に

青墓
墓なんて文字がくっついているわりにはにぎやかな宿場町。
朝霧姫
鳥彦王の三人の許嫁の一人。祭司の家系。ちょっと高慢。
足立四郎遠元
草十郎の腹違いの兄。義平の部下。
あとり
青墓の長者のかたわらにいる双子の少女のひとり。もうひとりはまひわ。
糸世=いとせ
白拍子の少女。舞の天才であの世?への扉を開くことができるらしい。気が強い。その笑顔はあらゆる男を虜にする。竹やぶで拾われたとかでかぐや姫っぽい。
大炊さま
青墓の長者とも呼ばれる。京の芸能の元締め。糸世がいたいけで無邪気で遠慮深く見えるほどとんでもない女性。
おばば
カラスの宰相の君。祭司。鳥彦王もなかなか頭が上がらない。
カラス
鳥の王である鳥彦王の血筋はカラスらしい。その情報網は全国にわたりしかもとても密なようだ。
吉左
山の湯治場を管理する猟師。
傀儡子
流浪の民。芸能で世間とつながったり特殊な体術でスパイのようなまねもするが本来なにものにも従属せず空と土を友として生きる。
検非違使
怖い警察機構。今で言うなら公安ってとこかな。
源兵庫頭頼政
平家に寝返った男。
幸徳
奇妙な体術を使う傀儡子。かなり強い。お堅い感じ。こういうタイプはだいたい後に味方になりそうな気がする。
佐吉
竹売りの行商人。人買いのようなこともしており糸世を青墓へ連れていった人物でもある。
さみどり姫
鳥彦王の三人の許嫁の一人。けもの使い。はっきりした性格。
上皇
現在の上皇は芸能ぐるいで両刀づかいで変わり者と評判。
正蔵
落ち武者狩りをしていた盗賊連中の頭目。草十郎を拾った。《おれはだれにも税を払わん。そこに生きている》(p.194)現実的なセリフでありながらなかなか深い意味もある。
末吉
富士の麓に住まう竹細工職人。糸世を竹やぶで拾い、育てた。
草十郎
たぶん本編の主人公。物語開始時点では15歳。板東武者。正式な名は足立十郎遠光。源義平の取り巻きの足立四郎遠元の腹違いの弟だが今は雑兵。細っちょい身体に似合わずかなり喧嘩が強い。天才的な笛の奏者で吹くと鳥獣がやってくる。異界の扉すら開くらしい。《あなたさんには風がある。だから、笛を吹かれるのでしょう》(by佐吉p.436)
平清盛
平家のトップ。本編が始まった頃は日本の支配者になる直前ということだろうか。
平重盛
平家の軍の総大将といったところか。
登美
正蔵のところにいた初老の女。
鳥彦王
日本を統べる鳥の王様のようで人語を使えるカラス。もっとも誰にでも聞こえるわけではない。とりああえず今の鳥彦王と草十郎は十年前から縁があるらしく人間のことを学習するためにやってきた。草十郎のことを草十と呼ぶ。
日満
熊野の山伏。糸世についてあれこれ世話を焼いている。
彦次
末吉の子。やはり富士で竹職人をしている。
放浪の民
傀儡子や竹売りなどの行商人は放浪の民。定住するものとは考え方が違う。《風が歌うものに耳を傾け、風に住むものたちを信じて生きるのです》(by佐吉p.435)
真鶴
青墓の遊君。大炊さまんとこの女たちは鳥の名前がついているのかな。糸世以外。そういえば主人公はカラスと友だちだしどうやら鳥のイメージを他人に抱かせるようだし。この物語じたい鳥のイメージなのかな。題名も風だし。
まひわ
青墓の長者のかたわらにいる双子の少女のひとり。もうひとりはあとり。
万寿
左馬頭義朝の娘だと思われる。青墓にいる。和琴の名手。
源三郎頼朝
源氏の御曹司。後の頼朝でしょう。この物語が始まった時点では13歳の初陣。
源義平
単純で好戦的で鎌倉悪源太と呼ばれる生まれついてのカリスマ。源氏の御曹司。御曹司という言葉は今では義経のことなのでそれ以前の人物であるこの人がそう呼ばれていたかどうかはさだかではないのだけど。
源義朝
ふつうには「左馬頭義朝(さまのかみよしとも)」とか「頭殿」と呼ばれる。平家が天下を取る戦のときに負けた源氏の総大将。
桃照姫
鳥彦王の三人の許嫁の一人。ていねいな物腰で鳥彦王に言わせるとちょっと太めらしいのだが…。人間の暮らしになじんでいる家系。
弥助
正蔵のところにいる少年。草十郎になつく。そういうタイプは命が危ないのではないかと心配。