よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

死の側から見た生の思い出(2)

(1)「菜穂子」はどこかちがう
菜穂子・楡の家 (新潮文庫)
 堀辰雄さんの作品をはじめて読んでから、もうずいぶんになります。近しさを感じたものです。
 でも、近親憎悪という感覚も同時に味わいました。眼をそむけても見えてしまう少女趣味じみたものをイヤだと思いつつ、やっぱりどこかで惹かれていたのです。
 ある女性に「アンタは堀辰雄、好きなんやろ」と問いかけられ、一瞬口ごもりつつ、「いや、嫌いなんやけど、菜穂子だけは気に入ってる」そう答えました。ホントカナア…と自問しつつ。ホントハ全部好ナンジャナイノ?と。
 それにしても、「菜穂子」には羞恥心をくすぐらない何かがあります。