よはくのてちょう

手帖の余白に書くようなことを

「すぐそこの遠い場所」クラフト・エヴィング商會

遊び心だけでできたクラフト・エヴィング商會の本。

この世にはない国の事典です。

そして帯には《見るたびに中身が変わる不思議な事典》とあります。
このキャッチコピーがついた段階で、ぼくに対して勝利したようなもんです(ぼくに勝利してもしゃーないんですけど)。
根っからの事典好き。それも毎回内容が変わるなんて、こんな魅力的なことが他にあるでしょうか。
理想の本かもしれません。
こんなに楽しい本、めったにないでしょう。

稲垣足穂さんや、ますむらひろしさんや、宮澤賢治さんなんかを好む人なら問題なく楽しめそうです。

そして朝が訪れるまでのわずかな間、それは机上の、あるいは手の中の、小さな星になるのである。(p.41)

「嘘」を愉しもうという人には、「本当」なんて、そもそもどうでもよいのである。(p.111)

この文章なんか、クラフト・エヴィング商會の本についてそのものですね。

はじめに『クラウド・コレクター』(単行本版)を読んで以来、これまでクラフト・エヴィング商會の本は避けてきました。
あまりにもぼくの趣味に合いすぎているのが、なんだか腹立たしくて。
嗜好が近すぎるのです。
おそらく、ぼくの作りたかったような本が「ここにある」のをやっかんでいたのでしょう。

でも、とうとう降参です。
手に入れないことが、たいへんもったいないことのように思われてきたので。

(2004年06月30日読了)